2013年07月12日

細胞の増殖を抑える遺伝子



間 黒助




人間の体は、

たえず新陳代謝してるにも関わらず、

体を形作る細胞は、

常に適切な数に保たれています。

これは人間の体が、

細胞の数を調節する精妙なシステムを持つからです。


その1つは、

細胞を増殖させる遺伝子 』 に書いたように、

“ 正の仕組み ” です。


そして別の1つは、

細胞の増殖を抑える “ 負の仕組み ” です。


ある種の細胞は、

隣りの細胞やそれを包む物質との間に、

“ 隙間 ” があれば増殖し、

この隙間が無くなれば増殖を停止するようにプログラムされています。


細胞の表面には 『 細胞接着分子 』 と呼ばれる物質が結びついています。

この分子は、

自分が付着している細胞が他の細胞に触れると、

すぐにそれを感じ取って、

その間をつなぐ “ 連結装置 ” として働きます。

それと同時に、

この分子は自分のいる細胞の内部に「増殖するな」という信号を送ります。

その結果、

細胞の増殖が止まるのです。


一方、

細胞はその構造を支え、

代謝を助ける固形物質(細胞外マトリックス)を産生します。

細胞表面には、

この物質を感知するための “ 専用アンテナ ” も備わっています。

アンテナが細胞マトリックスに触れれば、

やはり細胞の増殖ブレーキがかかります。


もし組織間の隙間を感知するこれらの物質の遺伝子に異常が起こったら、

何が起こるのかというと、

細胞の増殖が止まらなくなる可能性があります。


実際、

多くのガンでは、

これらの物質が遺伝子の変異によってうまく働かなくなっています。

そのため、

ガン細胞は組織内の隙間が無くなってもそれに気づかず平気で分裂を繰り返すのです。


もう1つ、

細胞の増殖を抑えるために重要な物質があります。

それは、

細胞に「増殖を止めよ」と指令するホルモンのようなたんぱく質です。


細胞がこのたんぱく質を受け取ると、

細胞内に変化が起こって細胞増殖に必要な遺伝子のスイッチが切られ、

かつ、細胞の増殖を止める遺伝子スイッチが入ります(遺伝子の発現)。

しかし多くのガン細胞は、

この信号を受け取る物質が変化しているため、

信号に気づきません。

そのため、

ひたすら増殖し続けることになります。


細胞の増殖を止める物質を作る正常な遺伝子をガン細胞の中に入れると、

細胞のガンとしての性質が抑えられる場合があります。

そこでこれらの遺伝子は、

『 ガン抑制遺伝子 』 と呼ばれます。




細胞の増殖を抑える遺伝子






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間 黒助





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