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Posted by TI-DA at

2013年05月31日

高齢者にガンが多いもう1つの理由



間 黒助です。




ガンと人間の免疫系の関係は相当に複雑で、

まだよく分からないことがたくさんあります。

しかし、

基本的に免疫力がガンを抑え込む力を与えていることは確実で、

免疫が強い人ほどガンにかからず、

免疫力が弱い人ほどガンにかかりやすくなります。

なので、

母親の免疫力でガッチリ守られている赤ちゃんがガンにかかることはありません。

基本的に免疫力が強い人はほとんどガンにかからず、

免疫力が弱ってくる高齢者ほどガンにかかりやすいのです。


ガンが高齢者に多いのは、

ガンの元である遺伝子への変異の蓄積が、

高齢者になればなるほど進むからですが、

もう1つ、

免疫力の強弱という点からも、

ガンが高齢者に多い理由になっていることが分かるでしょう。


下のグラフを見て下さい。









これは年齢別のガン死亡の統計です。

40歳以下のガン死者は極めて少なく、

50歳以下のガン死者もあまりいないということがすぐ読み取れます。


40代、50代前半までのいわゆる働き盛りの年代の人々は、

まだ充分に強い免疫力を持っているので、

あまり病気もせず、

たとえ病気に襲われても(初期のガンも含め)、

それをはねのけることができる(死に至らないですませる)ものだ、

ということがこのグラフからも読み取れます。


ただ、

ここで気を付けてもらいたいのは、

ガンというのは、

ゆっくり進行する病気であり、

大体、1つのガン細胞が生まれてから、

それが宿主の生命を奪うようになるまで平均して20年くらいかかるということです。

それが目に見える大きさになり、

最初の検査に引っ掛かるまで、

およそ10~15年の時間がかかり、

それからガンがさらに生長して宿主の生命を奪うまで、

最低でも5年はかかるということです。









つまり、

上の年齢階級死亡率グラフの年齢を20年ずらして読みかえると、

ガンがスタートするときの年齢分布になり、

また、

5年から10年ずらして読みかえると、

どんどん生長していく時期のガンを抱えている人の年齢分布になるということです。

ガンがスタートしてからしばらくは、

検査しても検査に引っ掛からない沈黙期のガンです。

日本人の3人に1人が、

いずれガンで死ぬということは、

3人に1人の人が、

元気いっぱいの40代、50代にガンをスタートさせ、

自分がすでに生長期のガンを抱えているなどとは夢にも思わない、

50代、60代にガンをどんどん生長させているということです。


元気いっぱい生活しているときには不摂生を積み重ねるものです。

そういう生活の中でガンは生まれ育ち始めるのです。

そういう生活の中で免疫力はどんどん低下し、

年に1回は必ず体を壊して、

何日かにわたって何らかの重大ではない普通の病気(風邪など)で寝込むようになるでしょう。

免疫力の低下で体が悲鳴を上げているということです。

そういうことからも、

ガンと免疫力の低下は強く結びついているのだと思います。


一般的に免疫力を高めることができればガンにかかりにくくなるだろうし、

ガンにかかってからも回復力、治癒力がついて延命率が高まることは確実でしょう。

しかし、

では、個々具体的なガン治療において、

いい免疫療法があるのかというと、それはあまり無いのです。

感染症なら、

主たる大きな感染症についてはワクチンができていて、

予防注射をすることで、

その病気にかかりにくくすることが容易にできるし、

大きな感染症については、

全ての日本人が、

子供のうちに、

半強制的にワクチン接種を受けさせられることになっているのはご存じの通りです。

しかし、

ガンの場合、

ワクチンを作る試みはずいぶん前から世界中で色々なされてきましたし、

今もなされているにも係わらず成功したものは1つもありません。

子宮頸ガンワクチンも、

ガンワクチンではなく、

子宮頸ガンにかかるリスクを非常に高めるヒトパピローマウイルス感染症のワクチンで、

必ずしも子宮頸ガンを防止できるものではありません。






※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

ご質問やご相談のある方は、

コメントにお書きになるか、

または下記のメールアドレスにメール下さい。

真摯なご質問・ご相談には必ず返信致します。



【間 黒助へのご質問・ご相談はこちらまで】

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コメントは“承認後に受け付ける”の設定になってますので、

コメントに書いた内容がいきなり公開されることはありません。

公開を控えて欲しい場合はそう書いてもらって結構です。

公開を控えて欲しいというコメントへの返答は、

質問内容を控えてブログの『コメントへの返答』カテゴリーで随時アップします。


少しでも心配事があるなら遠慮せずにコメント下さい。

そんな少しのことで今後が、未来が変わるかもしれません。


僕がご相談やご質問に対してどう返答しても決めるのは自分です。

そのためには少しでも情報を集め、

後悔しない選択をして下さい。


少しでもお役に立てればと思っております。




間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 13:00人間はなぜガンになるのか

2013年05月30日

転移の謎



間 黒助です。




一昨日書いた 『 マクロファージの裏切り 』 、

昨日書いた 『 ガン化の始まり 』 の続きになりますが、

傷口の修復手順である創傷治癒過程で起こる現象で、

もう1つガン化と非常に大きな係わりを持つのが、

『 上皮間葉転換(EMT) 』 と呼ばれる現象です。


人間の体内の臓器にできるガンは、

ほとんど(約8割以上)が上皮細胞にできる上皮ガンです。

そして上皮というのは、

体内の粘膜を作っている組織で、

人間の体の内側は全部粘膜で覆われていると言ってもいいです。

しかし、

多分ここで疑問を持った方が多いと思いますが、

人間の体内の臓器にできる固形ガンと、

人間の体内組織を覆っている粘膜との間には、

見た目からいってもあまりに大きな隔たりがあるので、

それは信じ難いということだろうと思います。

実際、

体内各部のヌルヌルした粘膜組織と、

見るからにいやらしい姿をした固形ガンとでは、

あまりに違うと言えば違いますからね。


その疑問はその通りで、

ガン化するとき、

上皮(粘膜)細胞が一挙にガン細胞に変わるわけではありません。

その中間段階があります。

それが 『 上皮間葉転換 』 と言われるもので、

上皮細胞が、

まず1度、間葉細胞に姿を変えるのです。

間葉細胞というのは、

体内のあらゆる組織と組織の間にあるつなぎ(結合組織)の細胞で、

そもそも上皮細胞とは形が違うのです。

同じ形できれいに並んでいた上皮細胞が、

圧迫されて菱形の間葉細胞になった途端、

間葉細胞が移動能力を獲得して動いてしまうのです。

要は、

傷口の治癒過程で起きた細胞移動によって、

傷口がふさがれていく過程と同じことが、

ガンでも起きていると考えられているわけです。


上皮間葉転換とそれによる移動能力の獲得というプロセスは、

生命進化史上のごく古い段階で起きた画期的なことであって、

それ以来、

上皮間葉転換に関わる遺伝子は、

あらゆる生物が個体発生のごく初期のところで、

必ず使う遺伝子の1つになったということになります。

具体的に言うと、

受精卵から出発して、

身体各部が出来上がっていく過程のあらゆる場面で、

先に出来上がった身体各部が、

しかるべき場所に移動していくということが何度も何度も起きるわけですが、

その全ての移動において利用される遺伝子が、

これと同じ遺伝子なのです。


ハエやミミズの体内でも人体でも、

ガンの転移の原因となる遺伝子は同じです。

受精卵の胚の中にある、ある部分から別の部分へと、

正常な細胞が移動できるようにするものです。

それと同じ遺伝子を利用してガン細胞は転移する力を得ています。

つまり、

生命の自然なシステムで、

ヒトとハエの最後の共通の祖先は、

6億年から6億5000万年前に存在していて、

その後、別々に進化しました。

しかし、

ヒトはいまだに胎児が発達する段階でハエと同じ遺伝子を使っているのです。

それがガンの原因となるわけですが、

それらの遺伝子は6億年間ほとんど変化していません。

同じ遺伝子で、同じ役割を持っています。


6億年ほど前、

多細胞生物が地球に発生した時点でガンのリスクが生まれました。

多細胞であれば、

その中の1つが異常な行動をし始める可能性があるということなのです。

多細胞生物の存在そのものがガンのリスクだと言えます。

ガンは産業社会が生んだものではありません。

ガンは6億年前から存在しているのです。

僕達はライフスタイルを変えることで、

ガンになる割合を増やしたり減らしたりすることはできます。

しかしガンは現代の産物ではありません。

ガンは、

全ての多細胞生物にとって、

本質的で先天的な宿命の病なのです。


ガンは全ての多細胞生物の宿命だと考えれば、

自分がガンになるのも仕方ないことではないかと納得してしまいます。


なぜガンがそれほど恐るべき力を持っているのか。

とにかくガンというのは、

色々な手段で叩こうとしても、

ガンのサバイバル能力というのは圧倒的で、

死んだと思っても死なない、その繰り返し繰り返し再発して、

さらにはどこか違うところに飛んでいく転移という現象を起こします。

ありとあらゆる手段を自ら作り出して困難を突破していくガンの能力というのが、

ありとあらゆる困難な状況の中で生命というものが生き抜いてきて、

今日の生命に溢れる時代みたいな、

そういう時代を生き抜いた、

生命の歴史そのものがガンの強さに反映しているということなのでしょう。


ガンは自分の外にいる敵ではなくて、

自分の中にいる敵というか、

「あなたのガンは、あなたそのものである」 という、

そういうことなのです。

だからそういう2重の意味でガンという病気は本当に一筋縄ではいきません。

ガンという病気そのものの中に、

生命の歴史何億年の、歴史そのものが込められた力が継続して生きています。

そういうことが1つありますし、

それからガンの強さは、

実はある意味では自分自身の強さというか、

自分自身の中にある生命というシステムでもあるわけです。

だからガンをあまりにもやっつけることに熱中し過ぎると、

実は自分自身をやっつけることにもなりかねないという、

ガン治療の物凄く大きなパラドックスというのがそこにあると思います。


このようにして獲得された転移能力こそ、

ガンの強さの根源みたいなところがあります。

つまりガンは、

60兆個の細胞が生存を続けていく生命の通常の営みの中で不可避的に発生します。

そのように不可避的に生まれた最初のガン細胞巣は原発巣と呼ばれます。

ガンの患者さんの多くは、

原発巣のガンが発展して死に至るのではなく、

それがどこかに転移して、

転移した先のガンが原発巣よりずっと悪性化したしぶといガンになって、

転移先のガンで死に至る方が多いと言われます。


しかし、


実はそこのところが必ずしもよく分かっていないのです。

転移のメカニズムがまだ充分に分かっていないことにも原因があるのですが、

あるガンが、

本当のところどこかに原発巣がある転移ガンなのか、

それとも、

そこで独自に発達してある時点から外在化したのかは、

よく分からないので、

個々のガンについて諸説が入り乱れることがあります。


転移の経路は、

基本的に原発巣のガンが血管の中に入って、

血流によって遠いところに運ばれるのだと考えられています。

しかし、

そこのところも実はまだよく分かっていないところなのです。

ガン細胞は基本的にどこかに足場を確保して、

そこで育っている限りは生きていられますが、

足場から離れてしまうと、

途端に生命維持が難しくなると考えられているからです。

そして、

心臓周りの血流の速さがガン細胞にとってあまりにキツ過ぎる(秒速100m以上)ので、

ガン細胞が全身循環系の主要な動脈に入って何度も叩かれると、

たいてい参ってしまうと言われています。

ガンが色々な臓器に転移するのは、

その中で血流が緩んで、

ガン細胞がそこに漂着して、

新たなコロニーを作りやすいところが見付かるからだと言われています。


いずれにしてもガン細胞が、

血管に入ることで転移するのがメインルートなら(リンパ管を通って転移するルートもある)、

血流をモニターして、

そこを流れているガン細胞の数をカウントすることで、

転移の危険性を判定できるはずです。

そういうアイデアは誰でも容易に思い付くので、

これまで多くの試みがなされてきましたが、

実はあまり成功していません。

引っ掛かるガン細胞の数があまりにも少なかったのです。

それでガン細胞は血流の中ではほとんど生きられないのだ、

と考えられるようになったという経緯があるわけです。


しかし最近になって、

全く新しい発想で開発された 『 CTCチップ 』 なるものを用いることで、

これまで数百倍の感度で血中を流れるガン細胞を捉えることが出来るようになりました。


これは、

半導体のチップを作るのと同じ技術を用いて1つ1つのチップの中に、

約8万本の極微のプラスチックの円柱を立て、

その1本1本に特定のガン細胞を捕まえるための抗体を、

ビッシリ貼り付けてしまうというものです。


このチップの中に特定の患者さんの血流の導入して、

その人の血流の中のガン細胞をリアルタイムで拾い上げることで、

病状の診断もできるし、

治療成果を測ることも出来るというわけです。

半導体チップと同じ生産過程で出来るので、

大量生産が可能だし、

1個1個のチップを安くして、

近い将来、誰でもいつでも利用できるようになるかもしれません。

感度が数百倍上がったので、

これまでガン細胞など血流中にないと思われていた患者さんの血中からも、

ガン細胞がどんどん見つかるようになって、

ガンの病態の捉え方が大きく変わりつつあります。

そういうデータがもっとたくさん出てくるようになると、

これまでよく分からなかった転移のプロセスが、

さらによく分かるようになると思います。




最後にCTCチップによる検査のデモンストレーションを見て頂きたいと思います。

CTCチップの本デモンストレーションの中で、

血液(蛍光標識されていない)に混合した、

循環腫瘍細胞(蛍光標識されて白く見える)は、

チップ内に流れる際にナノスケールのポストに捕捉されます。

チップは顕微鏡用スライドのサイズで78,000本のポストがあり、

ポストには腫瘍細胞の上皮細胞接着分子に対する抗体がコーティングされています。

(ビデオ提供者はマサチューセッツ総合病院/ハーバードメディカルスクールの、

Dr.Sunitha Nagrath 氏)








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 14:36人間はなぜガンになるのか

2013年05月29日

ガン化の始まり



間 黒助です。




昨日書いた 『 マクロファージの裏切り 』 の続きになりますが、

切り傷が治っていくとき、

傷口のところで肉が盛り上がりますが、

あの肉の盛り上がりは、

実質的に腫瘍形成と同じです。

そして、

その過程で主役を演じてるのがマクロファージなんです。

普通の人が知っているマクロファージは、

異物をひたすら食べていく大食漢細胞としてのマクロファージですが、

マクロファージにはもう1つの大きな役割があります。

それは切り傷ができて、

それを大急ぎで修復しなければならないというときに、

その現場監督として次々に命令を発して現場を仕切っていく役割です。


そういう傷口の修復手順は、

DNAの中に 『 創傷治癒プログラム 』 として埋め込まれています。

そのプログラムに従って、

一連のサイトカイン(信号物質)を次々に出していくのがマクロファージなんです。

傷口の修復過程におけるマクロファージの最も大切な役割は、

異物を食べることではなく、

信号物質を次々に発することで、

大きな創傷治癒プログラムを円滑に走らせることにあるのです。

マクロファージの一連の裏切りと取れる行動が、

実はマクロファージが本来の機能を果たしているに過ぎないのです。

通常、傷口ができると、

体から盛んに救援を求める信号物質が放出されます。

この物質を感知するとマクロファージなどの免疫細胞が集まります。

マクロファージは細胞の移動や成長を促す物質を放出します。

こうした物質に刺激を受けて皮膚の細胞が移動を開始し傷口を修復します。

要するに、

マクロファージが発出する一連のサイトカインによって始まる創傷治癒プログラムが、

ガン化の引き金を引いているということなのです。

そしてそれは同時に、

転移能力獲得の第1歩になっているということなのです。

マクロファージが通り道の異物を食べることで通路を切り開いてくれるから、

ガン細胞は移動能力(転移能力)を獲得するのだという意味ですが、

それはレベルの低い説明で、

マクロファージが信号物質(サイトカイン)を次々に出してくれるから、

その信号物質の発するサインに従って、

一連のプログラムが進行し、

それがガン化と転移をもたらしているというのが、

正しい説明です。


ここで大事なことは、

ガン化の第1歩は、

体内で起きた何か異常な現象から始まっているのではなく、

全く正常な過程の一部として踏み出されているということです。

人間の体の表の皮膚も、

内側の皮膚も、

しょっちゅう何かで傷がつきます。

傷がつくのも日常茶飯事の現象なら、

その修復過程が始まるのもごく当たり前のことです。

そして、

無事に修復過程が終われば、

傷口の跡は跡形もなく消えてしまいます。

しかし大きな傷口の跡が肉が盛り上がったままいつまでも消えないで残ることがあります。

腫瘍形成の最初の1歩はそれと同じ現象と言えるのではないでしょうか。


胃腸の粘膜が繰り返し傷付けられ、

その修復が何度も何度も繰り返されるうちに、

治癒しきれない創傷跡が残るようになりガンが発生するというわけです。

そういう傷を胃腸の内側になるべくつけない方がいいから、

刺激が強い食物、

発ガン性物質を含む食物をあまり摂取するなと言われるわけです。

しかし、

そういう食物にしても、

度が過ぎなければ食べても一向に構いません。

ガン化のリスクは統計的に高まりますが、

すぐにガンができるということではありません。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 11:28人間はなぜガンになるのか

2013年05月28日

マクロファージの裏切り



間 黒助です。




ガン代替療法で、

特に多いのが免疫療法です。

ここでガンと免疫の関係について書いておきます。


細胞は全てガン化する可能性を持っています。

事実、

細胞のガン化は全身いたるところでしょっちゅう起きており、

健康な人でも毎日5000個の細胞が新たにガン化していると言われます。

しかしその5000個のガン化した細胞も、

片っ端から体内の免疫細胞で退治されていくので、

健康な人であれば、

ガンはそう簡単には発症しないわけです。


たとえガン化した1個2個の細胞が生き延びたとしても、

それが一挙にガン細胞の塊になって、

その人の命を奪うということはありません。

1個のガン細胞の誕生と、

その腫瘍への発達の間には、

極めて大きな距離があるのです。

しかも人間の体には、

細胞のガン化にストップをかけるメカニズムが色々あります。

遺伝子レベルのメカニズムとしてはガン抑制遺伝子があります。

ガン抑制遺伝子は、

細胞の無軌道な増殖に待ったをかけます。

ガン抑制遺伝子は種類が色々あって、

ガン細胞が増殖する色んなレベルでブレーキをかけていきます。

それらのブレーキがどれもきかないときに、

細胞のガン化(無軌道な増殖能の獲得)の最初の一歩が踏み出される訳です。

そして、

とうとうガン化した細胞が誕生したとしても、

ガンの発病に至るまでにはまだ相当な距離があります。

生まれたばかりの最初期のガン細胞が、

一挙に、どんどん爆発的に増殖し出すわけではありません。

たいてい生まれるとすぐに免疫細胞に食べられ消化されてしまうと考えられています。


人間の免疫系には、

原始的な自然免疫系と高級な適応免疫系があります。

体外から細菌やウイルスなどが侵入してきたときに、

それをきちんと個体識別して選択的に退治していくのが適応免疫系で、

どんな異物であろうと出会ったら最後、

とにかく闇雲に相手を食べて消してしまうのが、

自然免疫系の食作用を持つ白血球系の細胞です。

そういう細胞は幾種類かありますが、

その中でも主役を務めるのが、

別名 “ 大食細胞 ” と言われるマクロファージです。

アメーバのような形状をしていて、

どんな異物でも見つけるとすぐに近付いてパクリパクリと飲み込んで消化してしまいます。


これまで、

体内のいたるところでしょっちゅう生まれているはずの、

発生期のガン細胞を退治してくれる主役はマクロファージだろうと考えられていました。

それは基本的にはその通りなのですが、

そのマクロファージが状況によっては、

ガン細胞を殺すどころか、

反対にガン細胞が育つのを助けてしまうこともあるということが分かりました。


マクロファージは原始的な細胞なので、

与えられた任務(異物と出会ったらパクパク食べる)を、

ただ機械的に忠実にこなしていくだけなのですが、

それがガン細胞が生きていくのを助けてしまうということです。

ガン細胞の悪性化の第1歩は 『 浸潤 』 作用といって、

増殖するに従って周辺の組織の中にジワジワと入り込み、

そこで増えていってしまうことにあります。

これを 『 浸潤 』 、英語では 『 invasion 』 と言います。

それは正しく宇宙人のインベーションと同じで、

ガン細胞という全く種を異にする生き物による正常細胞社会に対する侵略です。


正常細胞の間では、

このような侵略は決して起こりません。

正常細胞は全て自分の所属する組織の一部として、

一定の領域内で、

隣近所の細胞と互いに結合し合って、

あるいは敵対者ではないという生体信号を発し合って存在しています。

どの領域も、

基底膜という膜状の細胞のシートで囲われていますから、

ある組織に属す細胞がフラフラとただ1個所属組織を離れて、

隣の組織の中に進入していくことなど有り得ないのです。


細胞は自分の所属組織に属して、

隣近所の細胞と共同行動を取っている限り 『 良性 』 です。

たとえ細胞分裂の過程で何らかの間違いが起きて、

ちょっと余計に細胞ができてしまって(過形成)、

そこが膨れ上がってコブのような膨らみ(腫瘍)になってしまったとしても、

基底膜に包まれた細胞集団として、

まとまりのある1つの独立した領域を形成している限りは、

それは 『 良性腫瘍 』 なのです。


しかし、

その領域を囲っていた基底膜が崩れて、

その腫瘍に属していた細胞が隣りの領域へジワジワと入り込み、

2つの組織の細胞が混在するインベーションが起きたら、

その 『 良性腫瘍 』 は 『 悪性腫瘍(ガン) 』 になったと判断されます。

病理学者がガンの判定で顕微鏡を覗いているとき、

注意を集中しているのは、そこです。

組織と組織の間の細胞の配列の乱れと異細胞の侵入の有無、

すなわち浸潤の有無なのです。

つまりガン化が始まったかどうかは浸潤の有無によって判断されるのです。

その浸潤の最初の1歩を免疫細胞の大物中の最大の大物、

マクロファージが助けていたというのですからビックリです。

マクロファージは、

死んだガン細胞を食べてきれいにする掃除人役を務めますが、

生きたガン細胞は食べないのです。

そしてガン細胞の進行方向にある邪魔者をどんどん飲み込んでしまうのです。


マクロファージの本来的役割の1つに傷の修復があります。

傷を修復するためにマクロファージは次々に一連の信号物質を放出します。

その信号物質が、

マクロファージに自然とガン細胞の変動の先導役を務めさせてしまうのです。


分かりやすいように “ 一連の信号物質 ” と表現していますが、

これはカテゴリー的には 『 サイトカイン 』 と呼ばれている物質で、

全て固有名詞があります。

人間の体の中は、

細胞と細胞がガチガチに結合し合って、

動きが取れない状態にあるわけではありません。

人体の60%は水分ですから、

個々の細胞はいわば細胞間を埋めている液体に浸った状態で、

ゆるゆるの結合しかしていません。

その細胞間の海の中に各種の信号物質、生理活性物質が漂っていて、

それが細胞と結合すると、

その細胞に今何を成すべきかの信号が伝達されるわけです。


これが細胞社会で起きる現象の原型です。

さらに腫瘍形成の第1歩も、

そういうパターンとして起きるということが、

最近ステップバイステップで分かるようになってきました。

そして分かってきた意外なことは、

ガンの第1歩がナイフで切るなどしてできる傷口の修復過程とそっくりだということです。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:15人間はなぜガンになるのか

2013年05月25日

粘膜は外敵と戦う主戦場



間 黒助です。




昨日書いた 『 ほとんどは上皮ガン 』 について、

もう一言付け加えておきますと、

粘膜上皮は、

実に様々な機能を持っていて、

それはありとあらゆる意味で、

生命作用の最前線とでも言うべき作用を担っているということです。

例えば、

肺の内部にある呼吸器細胞(肺胞)粘膜は、

酸素の取り入れそのものを行っていますし、

胃腸の内部にある消化管粘膜は、

栄養分の吸収を行っていますが、

これらの粘膜は、

いずれも生命の維持に直結した役割りを担っているわけです。


肺胞の粘膜は、

広げると60平方メートルになりますし、

消化管粘膜は広げると実に400平方メートルにもなります。

そのどちらも、

外界と直接接触する部分ですから、

細菌やウイルスなど外敵からの攻撃に常にさらされています。

その攻撃から身を守るシステムとして、

体内粘膜はそれ自体が免疫装置になっていて、

粘膜表面に白血球、マクロファージ、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、

インターロイキン、インターフェロン、免疫グロブリンなどなど、

ありとあらゆる種類の免疫細胞やそこで作られる物質が出てきて、

そこを外敵と免疫細胞の間の戦いの主戦場に変えてしまうのです。

言ってみれば粘膜は、

全体として人体細胞の免疫機構として働いているので、

粘膜疫学という学問世界が成立しているくらいです。


肺ガンや消化器ガンになると、

生命維持の根幹である呼吸作用や栄養吸収作用が脅かされますが、

それを救おうと抗がん剤を投与すると、

もっと恐ろしいことになります。

ガンは腫瘍ができた局所の作用を脅かすだけですが、

抗がん剤の作用は、

まず人間の生命の中核と言ってもいい骨髄を襲います。

骨髄には、

造血幹細胞があって、

人間の血液を造り続けています。

赤血球、白血球、血小板などあらゆる血液成分が骨髄で作られています。

赤血球は寿命が120日、

白血球は種類がたくさんあって、それぞれ寿命が違いますが、

1番多い(4~7割)好中球はわずか2、3日の寿命です。

他の血液成分も寿命が短いので、

骨髄の造血機能がストップすると、

人間はすぐに生きていけなくなります。

人間が生きるということは、

血液を休みなく造り続けることとイコールなのです。


血液は酸素、栄養分など、

生命維持に必要なあらゆる生体分子を常時運んでいますから、

血流は生命の流れそのものと言ってもいいくらい大切なものですが、

抗がん剤の最大の副作用は、

『 骨髄抑制 』 といって、

骨髄の造血機能そのものを障害することにあります。

抗がん剤を服用するようになると、

たちまち白血球の数がどんどん少なくなります。

そのため、

免疫力がガクンと低下して、

あらゆる感染症にかかりやすくなります。

赤血球も減るので貧血になります。

血小板が減少するので、

皮膚に点状紫斑が表れたり、

鼻の粘膜や歯肉から出血したりするようになります。

さらに減少が酷くなると、

脳出血、消化器出血すら起こります。


骨髄の造血幹細胞は、

赤血球、白血球などの血液成分を造るだけでなく、

人間の免疫作用の主たる担い手であるリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)も作っています。

抗がん剤の障害作用はここにも及ぶので、

患者さんの免疫力は著しく低下します。


ここで見逃せないのが、

それらの免疫細胞が最も活躍する場が、

体内の粘膜層だということです。

そこは細菌、ウイルスなどの外敵が、

いつでも体内に侵入してやろうと虎視眈々と狙っている場所ですから、

体内からはいつでも侵入者を撃退すべく、

一連の免疫細胞が待ち構えていて、

そこは両者の食うか食われるかの大闘争が常時繰り広げられる場になるわけです。

その大切な粘膜層が抗がん剤の作用でズタボロにされれば、

当然免疫力が低下します。

かくして抗がん剤は、

免疫細胞そのものの生成を阻害するのと、

免疫細胞の生活と活動の場を奪うのと二重の意味において、

人間の免疫力を低下させるわけです。


その結果として、

患者さんは様々な病気にかかりやすくなります。

それでどうなるかと言えば、

患者さんは、

ガンで死ななかったが、他の病気で死ぬ、

という結果に終わる可能性が相当にあるのです。

つまり、

抗がん剤を服用し続けた結果の死が、

必ずしもガン死統計に載らない形の死になることもあるということです。


それはある意味で、

抗がん剤の広義副作用による死と言えるでしょうが、

そのようなカテゴリー分けがあるわけではありませんから、

それは統計上表れてこない副作用死です。

しかし、

知っている範囲の具体的ガン死のケース、

遺族が、

「抗がん剤が効いて、ガンの方は縮小しつつあったのですが、

急に肺炎が酷くなって……。」

などと言っているのを聞くと、

僕は、

「多分、医者からそう聞かされているのでしょうが、

本当のところ、それは抗がん剤の副作用として、

免疫力の低下死だったのではないですか?」

と言いたくなるようなケースだということです。


その抗がん剤に本当のところ延命効果があったのか、

それとも短縮効果しかなかったのか。

同一の患者さんについて、

その薬を「使う」ケースと「使わない」ケースと、

両方やって比較するなどということは出来ませんから、

どちらとも言えないで終わるしかありませんが、

似たような症状の患者さんに対して、

その薬を使用したケースと使用しなかったケースを比較したデータは色々あって、

実は、

延命効果がハッキリ出ているケースはさほどありません。


大雑把に言えば、

延命効果はせいぜい2ヶ月程度です。

そもそも、

抗がん剤が抗がん剤と名乗ることを許されるためには、

臨床試験で2ヶ月程度の延命効果があることが証明されなければならない、

という規定がありますから、

2ヶ月の延命効果があるのは当然なのですが、

それ以上のものにはなかなかなれないということです。


ガンの治療は、

手術、放射線などの物理的療法を終えると、

あとは抗がん剤治療(化学療法)しかなくなります。

しかし、

抗がん剤にできることは限られています。

抗がん剤で完治が望めるガンは極めて限られたものです。

小児ガン、液性のガン(白血病などの血液のガン)は、

確かに抗がん剤によって治る病気になったということができますし、

リンパ腫なども抗がん剤治療によって治ることが期待できます。

しかし、

その他一般の固形ガン(血液ガン以外のガン)については、

絨毛ガン、睾丸腫瘍、胚細胞腫瘍など以外は完治は望めず、

症状緩和、延命効果しかありません。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 20:18ガンと生きる

2013年05月24日

ほとんどは上皮ガン



間 黒助です。




ガンの治療で厄介なのは、

ガンは100%の敵ではなく、

自分自身でもあるということです。

ガンに対する攻撃は自分自身に対する攻撃でもあります。

ガンの手術は多かれ少なかれ、

自分自身の健康な肉体を傷つけ、

その一部を切除してしまうことでもありますから、

肉体的に相当な負担になります。


例えば、

膀胱ガンなら、

ちょっと重たくなると、

膀胱全摘出などといった大変な事態になります。

胃ガンなら胃を全部取った、半分取ったなどというケースがよくあるし、

大腸、結腸なら、相当部分を摘出して、

人工肛門を付けざるを得なかったなどというケースもよくあります。

ガンの患部だけをピンポイントで切り出すということはほぼ出来なくて、

予後の安全(周辺組織への浸潤を防ぐ)のためにも、

健康な部分も一緒に大きくえぐり取らなければなりません。

放射線療法の場合も、

ピンポイントで患部だけに放射線をかけることは出来なくて、

健康な部分を含めて放射線をかけることになりますから、

どうしても副作用から逃れられきれません。


副作用が特に深刻なのは、

化学療法と言われる抗がん剤治療の副作用です。

抗がん剤は、

ガン細胞の増殖を止めようとします。

しかし抗がん剤は、

ガン細胞だけにピンポイントで作用するということが出来ません。

抗がん剤を投与するとそれは血流に乗って、

全身の隅々まで運ばれていきます。

手術や放射線は、

ピンポイントでないにしろ、

患部だけに働きかける局所療法ですが、

抗がん剤は全身療法にならざるを得ないのです。

その副作用は全身に及びます。


ガン細胞の際立った特徴は、その急速な増殖になります。

ガンとは、

ある部分の細胞がとめどなく増殖するようになる細胞の病気です。

抗がん剤はその増殖を抑えようとする薬です。

しかし、

ガン細胞の増殖だけを抑えることが出来ないので、

あらゆる細菌の増殖を抑えようとします。

だから抗がん剤の副作用は大きいのです。


人間の体は全て新陳代謝しています。

60兆の細胞が皆、新しい細胞に置き換わることを日々に続けていくから、

人間は生きているのです。

(全ての人において毎日平均数千億の細胞が新しい細胞に置き換わっています)

細胞は皆、細胞分裂によって新しい細胞になっていきます。

それを抑えようとするのが抗がん剤ですから、

抗がん剤は、

人体の全ての細胞の自然な働きを止めようとする薬だとも言えるわけです。

言ってみれば、

抗がん剤は生命の自然な働きに反する薬なのです。

だからつらい副作用がいろいろ出てしまうのです。


人体の細胞の中にも、

新陳代謝のスピードに速い遅いがあります。

新陳代謝のスピードは速いところは、

細胞分裂がそれだけ活発なところです。

抗がん剤は細胞分裂が活発なガン細胞に働きかけてその細胞分裂を止めようとします。

すると、

ガン細胞以外の、

元々細胞分裂が活発なところにもその働きかけが及んで、

そこの細胞分裂を止めようとします。

抗がん剤の副作用の第1が頭髪が抜けることになるのはそのためです。

毛根は体の中で細胞分裂が激しいところだからです。

副作用の第2は気持ちが悪くなり、

吐き気がしたり、食欲が無くなったりすることです。

これは、

胃腸など消化器の粘膜部分が体の中で最も新陳代謝が激しいところだからです。

胃腸の粘膜は、

数日の間に全部入れ替わるほど、

新陳代謝が激しい(細胞分裂が盛んな)ところなのです。


実はそのように細胞分裂が盛んに行われている場所は、

同時にガンができやすい場所でもあります。

ガンとは細胞分裂システムが狂うことですから、

そのように、

細胞分裂が常日頃から激しく行われている場所こそ狂いが生じやすいのです。


人間の体は全て皮膚に覆われています。

体の表面を覆っているのが表皮で、

我々が普通皮膚と呼んでいるのは、こお表皮です。

人間の体は、

実は内側も全部粘膜質の皮膚で覆われています。

口の中も鼻の中も胃腸などあらゆる臓器の中も、

肺の中も食道の中も、

肛門や膀胱の中も、

全部内側の粘膜質の皮膚で覆われています。


この体の内側の粘膜質の皮膚を “ 上皮 ” と言います。

その上皮にできるガンが 『 上皮ガン 』 なのです。

ガンを分類するとき、

よく胃ガン、大腸ガン、食道ガン、乳ガン、子宮ガンのように臓器別の分類をします。

しかし、

これらの臓器ガンのほとんどが、

組織学的分類では上皮ガンなのです。


ガンには、

肉の部分にできる肉腫、

骨の部分にできる骨腫などもあります。

しかし、

圧倒的に多い(8割以上)のは、

胃ガンでも、大腸ガンでも、肺ガン、食道ガン、膀胱ガン、乳ガンでも上皮ガンです。

ガンを漢字で 『 癌 』 と書くことがありますが、

『 がん 』 と 『 癌 』 を専門家がどう使い分けているかと言えば、

『 癌 』 は上皮ガンに用い、

『 がん 』 は全てのガンに用いるというのが一般的な使い分けです。

(僕のブログでは読みやすさを第一に “ ガン ” と表記)

それくらい上皮ガンが一般的なのです。


なぜ圧倒的に上皮ガンが多いのかと言うと、

人間の身体で最も新陳代謝が激しいのは体内の粘膜部分だからです。

表皮の新陳代謝は、

風呂に入って石鹸で体を擦ると、

垢になって削げ落ちていくので自分ですぐ分かりますが、

体内上皮の新陳代謝されたものは、

大便小便の中に入って排泄されてしまうので、

普通の人はなかなか気が付きません。

体内の上皮の1番大きな部分は胃腸の内皮で、

それは全部広げると400平方メートルにも及びます。

表皮の総面積より遥かに広いのです。

それが2日に1回むけて排泄されるのですから、

大便の相当部分が実はそれであるのに我々は気付かないのです。


抗がん剤を服用するようになると、

頭髪が抜けるだけでなく、

皮膚が輝きを失い、ボロボロになってヒビが生じたりしますが、

それは皮膚の新陳代謝が妨げられるからです。

皮膚がボロボロになる以上に、

体内上皮部分(体内のあらゆる粘膜)がボロボロになっていきます。

それが吐き気、食欲不振などあらゆる副作用現象の元になっています。

人間の日々の栄養吸収は、

胃腸の上皮が行っているので、

それがボロボロになれば吐き気も食欲不振も起きて当然です。











※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

ご質問やご相談のある方は、

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間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:34ガンと生きる

2013年05月23日

発ガン物質説とがんウイルス説



間 黒助です。




ガンの研究の歴史は、

ガンとはそもそも何であるのか?

何がガンを生み、何がガンを進行させるのか?

何がガンの進行を止められるのか?

を巡って繰り返されてきた延々たる論争の歴史でもありました。

歴史を辿ると、

しょっちゅう新しい発ガン物質説が立てられ、

その度に社会は右往左往してきました。


ちょっと思い出しただけでも、

あれやこれやの発ガン物質説が流行った時期がありました。

何らかの原因物質を体内に取り込むことによってガンが発症するのだから、

それさえ防ぎ止めればガンにはかからないとする説です。

原因物質としては、

実に様々なものが挙げられました。

コールタールから始まって、

魚の焼け焦げ、タバコ、アスベスト、農薬、防腐剤などの食品添加物、

ダイオキシンなどの大気汚染物質、

環境汚染物質の全てなどなどです。


それらの説は当たっていたとも言えますが、

当たっていなかったとも言えます。


いまだに人の命を奪い続けている感染症との比較で言うと、

感染症の主要因である、

病原菌のようなものが、

ガンについてはついに見つからなかったのです。

その物質を取り入れれば必ずガンになるし、

その病原物質の取り込みさえ防げばガンに絶対ならないというような原因物質は、

ガンの場合は無いのです。

発ガン物質と言われているものは、

それぞれに発ガンリスクをそれなりに高める可能性はあります。


ここで大事なことは “ それなりに ” ということであって、

“ それは必ず ” という一発必中的なリスクを高めるものではないということです。

1口に言えば、

発ガン物質は全て “ 当たらずといえども遠からず ” で、

それぞれに当たっています。

リスクは高めます。

しかし、

“ 一発必中 ” ではありませんから、

いたずらに心配し過ぎるのも考え物ということです。

それなりに用心してリスクの高さに応じて遠ざければいいというだけの話で、

神経症的に遠ざけるのも良くありません。

心理的ストレスによるマイナス効果を考えたら、

マイナスの方がずっと大きいかもしれません。


ガンは感染症(伝染病)ではありませんから、

ガン患者に近付かない方がいいとか、

接触しない方がいいと考えるのも誤りです。

一時、ガンウイルス説が盛んに唱えられたことがありました。

『 がんウイルスついに発見!』 がニュースになったこともありました。


しかし、

その全てが誤りでした。

これが 『 がんウイルス 』 だと決め手になるウイルスが発見されたことはないし、

恐らくこれからも発見されることは無いでしょう。


ヒトパピローマウイルスと子宮頸ガン、

C型肝炎ウイルスと肝臓ガンのように、

特定のガンの発症リスクを著しく高める幾つかのウイルスがあることはあります。

しかし、

それらのウイルスにしても、

感染症と病原体のように、

一発必中で1対1対応するというものではありません。

あくまでも高度にリスクを高めるという話です。

ヒトパピローマウイルスにかかっても子宮頸ガンを発症しない人はいくらでもいるし、

ヒトパピローマウイルス以外の原因で子宮頸ガンになる人もたくさんいるのです。


感染症と病原体を結びつける、

いわゆる 『 ※コッホの四原則 』 がここでは成り立っていないのです。


(※ある一定の病気には一定の微生物が見いだせること。

その微生物を分離できること。

分離した微生物を別の動物に感染させると同じ病気を起こすことができること。

その病巣部から同じ微生物が分離されること。

以上の4つのことができるなら、その微生物を病原体と呼んでいい。)


特定のウイルスが特定のガンを発症させるリスクを高度に高めるということはありますが、

だからといってガンが感染症であるということにはならないのです。

ガンの本質を知る上で、

これは極めて重要なポイントです。


では、

ガンとはそもそもどんな病気なのか、

その答えはいまだに充分答えられたとは言い難い状況にありますが、

基本的にそれは細胞の病気であり、

遺伝子の病気です。

現象的にそれは生体のある部分で細胞の増殖が止まらなくなり、

悪性の腫瘍ができてしまう病気です。

それは細胞増殖、細胞分裂にかかわる遺伝子の病気です。

そこまでは確実に言えますが、

その先、

もっと深いところでガンの成因とその進行過程を捉えようとすると、

とめどなく複雑な話になっていって、

その後の筋道を単純明確に説明することは出来ません。

従って、

これが決め手というガンの絶対的な治療法を見付けることも出来ていないのです。


しかし、

そうこうしているうちに、

ガンは世界中、特に先進国で最も致死率が高い病気の1つになり、

金銭的にも、

医療関係者のエネルギーと努力の注がれ方においても、

世界中で最も多くが投じられる領域になりました。

そのおかげで、

ガンについては相当多くのことが分かってきているし、

新しい治療法の開発も次々に進んできてはいます。

しかし、

ガンの克服が間近というところまではきていません。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 22:55人間はなぜガンになるのか

2013年05月22日

『がんの特効薬は発見済みだ!!』 の記事を書いて半年が経ちました



間 黒助です。




「がんの特効薬は発見済みだ!!」 の岡崎公彦氏との出会い 』 の記事を書いて、

今月の頭で半年が過ぎました。


パラヒドロキシベンズアルデヒドに関しては、

服用してからの経過や予後の情報が非常に少ないのが、

皆様の心配が及ぶところだと思います。

ガンの患者さんは高齢が多いので、

ブログなどをしていない方が多いことも情報の少なさの理由に加担していると思います。

僕にメールをしてくるのも、

ご家族が当人に言われたことをパソコンに打ち込んでいる場合が多いです。

そういった理由から情報を欲している方々も多いと思いますので、

この半年の統括を簡単に書きたいと思います。




まずこの半年間で、

100名弱の方々のパラヒドロキシベンズアルデヒドに関する相談に乗り、

たくさんのやり取りをしながらパラヒドロキシベンズアルデヒドをお送りしてきましたが、

副作用は今のところ皆無です。

逆に半年経って良い報告がかなり多くなってきました。


「腫瘍が小さくなった」

「腫瘍マーカーの数値が減った」

「腫瘍は小さくはなってないけど、大きくもなってなく、体調も安定している」


パラヒドロキシベンズアルデヒドをお送りした100名弱の9割以上、

ほとんどの方がステージⅢ~Ⅳの方々です。

腫瘍が簡単に消えるなどと、

そこまで期待はしていませんから、

もちろんそう簡単にいかないでしょう。

しかし、まだ半年ですが、

上記の報告だけでも十分に今後の可能性が楽しみになります。

ちなみに僕がパラヒドロキシベンズアルデヒドお送りしている方で、

亡くなられた方はまだいませんが、

自分でパラヒドロキシベンズアルデヒドを入手され飲んでいる、

という方の相談も受けていて、

そういった方が2名(末期で終末期の方でした)、

残念ながら亡くなられたということも加えて報告しておきます。


しかし、

僕は “ 腫瘍が消える ” ということに重点は置いてなくて、

いかに、

“ 毎日をいつもと(健常時と)変わらず穏やかに過ごせるか ”

に重点を置いているので、

「腫瘍は小さくはなってないけど、大きくもなってく、体調も安定している」

という報告だけでも嬉しくなりますし、

何よりメールの文面が明るく前向きな文章に変わってきている感じがするので、

精神的にもプラセボ効果(プラシーボ効果)のように、

何らかの改善があるなら、

パラヒドロキシベンズアルデヒドを服用する意味はあると思います。

上記の効果についても、

もちろんパラヒドロキシベンズアルデヒドが効いているかどうかは分かりません。

しかし、

問い合わせをしてくる方々のほぼ全員が、

「抗がん剤治療ではなくパラヒドロキシベンズアルデヒドを試してみたい」

と問合せしてくるので、

上記は抗がん剤を投与していない方々の報告です。

なので上記の効果は抗がん剤の効果ではありません。


問い合わせがあった100名弱の方々のうち、

抗がん剤をしながらパラヒドロキシベンズアルデヒドの服用をされている方は、

今のところ2名しかいません。

この2名の方は今のところ順調のようです。


また、

全国に数ヶ所ある、

パラヒドロキシベンズアルデヒドを処方するクリニックで処方を受けている患者さんからも、

かなりの問い合わせを頂きました。

全てが料金に関するもので、

各クリニックの料金を詳しく聞くと、

はじめは安かったのが、

量が増えてくると徐々に高額になり、

一般的な所得の方ではなかなか長い期間続けるのは困難な金額になっています。

自由診療なので高いのはしょうがないかもしれません。

代替療法の多くでは、

患者さんが少し無理をすれば何とか払える、という程度の金銭が要求されます。

短期間試す程度であればまだしも、

長期間にわたって取り入れるとなると結構な額になってしまいます。

代替医療、特にパラヒドロキシベンズアルデヒドのような、

ガンの患者さんにとっての小さな希望が高額であってはなりません。

代替医療は高いお金をかけてやるものではないと思います。

それがあまりにも高額であれば、

本来の医学的な治療を行う際の妨げになってしまいます。

先端的な自由診療を行うのであれば尚更です。

代替医療に高額なお金をかけるよりも、

個人的には、

そういうお金はできるだけセーブして、

穏やかに過ごしながら、体が動くのであれば伴侶と旅行に行ったり、

効果が期待できる、

科学的根拠のある先端的治療を受ける費用に振り向けるべきだと思っています。


そういった金銭的な部分でお困りの方も、

ぜひご相談されて下さい。




この半年間を見てきての後記になりますが、

パラヒドロキシベンズアルデヒドが効くとはもちろん言えません。

しかし試す価値は十分にあると思います。

治療法や術後予防でお悩みの方々は1度試されてみるといいと思いますよ。


病名、ガンのステージや症状など何回かやりとりをさせていただき、

ある程度の信頼関係が築けた方のみ、

パラヒドロキシベンズアルデヒドを3週間分は無料でお送りしますので、

下記の記事を読んでみてお気軽にメールでお問い合わせ下さい。




「がんの特効薬は発見済みだ!!」 の岡崎公彦氏との出会い











※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

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間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 19:10パラヒドロキシベンズアルデヒド

2013年05月21日

検出できない微小転移



間 黒助です。




医師の中には、

患者さんを安心させるために色々なことを言う人がいます。

しかし、

それは必ずしも当てになりません。

例えば、

「ガンはもう不治の病ではありません。ガンは治る病気です。ガンは怖くありません。」

などと言う人もいますが、

そんなことはありません。

ガンは基本的に怖い病気です。

不治の病かそうでないかと言えば、

治癒という言葉の定義にもよりますが、

本質的には不治の病と言った方が正しいのです。


しかし、

ガンが治ったように見える場合もあるし、

医師がそういう表現をする場合もあります。

でも、

それはより正確に言えば、

ガンが見えなくなったというか、

通常の検出手段では検出不可能なレベルに小さくなった、

というに過ぎないケースがほとんどです。

どこかに転移している様子が全く見られないというときに、

医師はそのように言うことがありますが、

それは必ずしもガン細胞がゼロになったということを意味しません。

ガンは基本的に、

ガン細胞の数が、

10億個以上の細胞の塊になったとき(重さにして1g、径にして1㎝)が検出限界で、

それ以下のガン細胞の塊は見つけることができません。


しかし、

検出に引っ掛からなくてもそれ以下のガン(マイクロ発現状態、または微小転移状態)は、

いつでもあり得ることだということを知っておく必要があります。

手術して取ったはずのガンが、

しばしば何年か経ってから再発するということがあるのはなぜかと言うと、

微小転移したガンが時間の経過と共に、

大きく育って、

検出限界以上になってしまったということがあるからなのです。

なので、

検査でガンが消失したように見える場合でも、

良心的な医師は、

安易に「あなたのガンは根治しました」などとは言わず、

将来再発の可能性があることをハッキリ告げるものです。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:22日本の医学界

2013年05月20日

ガンの免疫抑制を解除する術


間 黒助です。




ガンの作る免疫抑制を解除するにはどうすればいいのかというと、

まずは何と言っても手術です。

ガン細胞そのものを最大限、根こそぎ取ることができれば、

免疫抑制を働かせている “ そのものの根 ” が断たれるでしょう。

また、

放射線治療も、

ガン細胞の絶対量を減らすことで、

局所的な免疫抑制解除の役割を果たすことになり、

意味があると思います。




ただ、

今回はそうした物理的な免疫抑制の解除方法はいったん置いておいて、

ガン細胞に対して分子レベルで作用する方法がないかを検討していきたいと思います。




最近、

アメリカで認可された 『 エルボイ(一般名:イピリムマブ) 』 は、

CTLA‐4という制御性T細胞が生産する免疫抑制因子を、

抗原として狙い撃ちにできる分子標的薬(モノクローナル抗体製剤)です。

大幅な生存期間の延長が認められ、

切除不能のメラノーマの患者さんに対して認可されました。


また現在、

国内でも臨床試験が行われている最中の抗PD‐1モノクローナル抗体製剤も、

T細胞(Tリンパ球)の活性化を阻害する因子の除去を狙ったものです。

進行性のメラノーマ、非小細胞肺ガン、

腎細胞ガンなどに対しての臨床試験が進んでいますが、

かなりの効果が期待できると聞いています。


ただ、

現在これらの薬を使うことには問題があります。

1つは価格の問題です。


例えば上記のエルボイは、

2012年時点では、

アメリカで投与を受けたとしても、

1コース4回の投与で約1,000万円近くかかってしまいます。

少し前にアメリカで認められた、

前立腺ガンに対する樹状細胞ワクチン 『 プロペンジ(一般名:シプリューセル‐T) 』 も、

1コース800万円近くかかるそうです。

よほどの資産家でもなければ使える薬ではありません。

また、

もし投与して実際に効果が出たりしたら、それはそれで問題になるでしょう。

心情的に2クール、3クールと続けないわけにはいかないだろうから、

資金が尽きるまで止められなくなる恐れさえあります。


問題は、

薬剤を認可するために必要な臨床試験に莫大な費用がかかることです。

製薬会社は数千億円ともいわれる開発費を償却する必要があるので、

“ 命の値段 ” が跳ね上がってしまうのです。

これらの薬も、

将来は時間と共に価格が下がり誰でも使用できるようになるでしょう。

しかし、

多くのガン患者さんはその時間を待つことができません。

ある意味、地獄の苦しみです。


また、

抗PD‐1モノクローナル抗体製剤の方は、

臨床試験なので誰でも受けられる治療ではありません。


ここで挙げた2つの薬、

エルボイと抗PD‐1モノクローナル抗体製剤は、

特別、免疫系の活性化を意図したものではありません。

単に、

一方向からの免疫抑制の解除だけを目的とした分子標的薬です。

この事からも、

これからのガン治療の方向性を考える時に、

免疫抑制の解除がいかに重要なポイントになるかが理解頂けるのではないでしょうか。


ところで、

ガンの免疫抑制を解除するだけで、

ガン治療に繋がる可能性があるという話を散々書いておいて、

実際にそれを行うには上記のように、

あまりにも高額な治療費がかかるというだけでは、

ようやく上がったハシゴを外されたということになりかねません。


そこで僕の個人的見解は置いといて、

今すぐに、

多くの患者さんが手の届く範囲の金額で、

治療に応用できる一般的な免疫抑制の解除方法を考えてみたいと思います。


第1に考えられるのは、

低用量の抗がん剤の使用があります。

ガン細胞を殺さない程度のごく少量の抗がん剤の使用は、

ガン細胞の活動を抑制し、

同時にガン細胞が作り出す免疫抑制を外す効果があると言われます。

マウスの実験では、

最大耐用量の10分の1程度の少量のシクロフォスファミド(抗がん剤)と併用することで、

活性化リンパ球の腫瘍殺傷作用が大幅に上がるという研究結果が確認されています。


また、

これとは別の手段として、

ビタミンC療法にも可能性があるかもしれないと考えています。

分子生物学的にはまだよく分からないのですが、

低用量の抗がん剤と同じようにガン細胞の活動を抑制し、

結果として、

ガン細胞周辺の免疫抑制を外す効果があるのではないかと考えています。


さらには、

セレブレックス(一般名:セレコキシブ)などのシクロオキシナーゼ2(COX‐2)阻害薬には、

免疫抑制因子の最右翼である、

プロスタグランジンE2(PGE2)の生産をブロックする効果があるので、

これも免疫抑制解除のために使用できるのではないでしょうか。

尚、

プロスタグランジンE2(PGE2)と並ぶ代表的な免疫抑制因子、

TGF‐β(ベータ) 『 ガン細胞の増殖が止まらなくなるのはなぜか を参照 』 に関しては、

これを阻害する薬は試薬としてはいくつか存在するようですが、

標準治療で認可されたものはまだ無いようです。


正常細胞でも生産され、

バランスのとれた形で生体内のいたるところで働いている生理活性因子を、

ガン細胞だけで阻害し、

働かないようにすることはなかなか難しいことです。

通常の薬として血管内に投与すれば、

体全体に広がって正常細胞にも作用してしまうからです。


また、

別の観点から、

免疫抑制解除の方法を検討することもできます。

製薬会社は、

臨床試験に湯水のごとく金がかかるガンに対しては後回しにして、

まずは早期に認可が下りやすい他の病気で保険適応の承認を取って、

その後に適応を拡大させる手法を取る場合があります。

その戦略を逆手に取れば、

将来的にガンの治療薬として認められる可能性が高い薬を、

早期に使用できる可能性があります。


例えば、

リンパ球が適応免疫を担う 』 で紹介した、

リウマチに対するモノクローナル抗体製剤のいくつかは、

TNF‐α(アルファ)というシグナル伝達物質を阻害する分子標的薬です。

これらの薬にはガン細胞を殺す作用は無いので、

単体では大きな効果が表れないかもしれません。

しかし、

他の薬剤や治療法と併用することで、

治療効果を期待できるかもしれません。


TNF(Tumor Necrosis Factor)は、

日本語にすると 『 腫瘍壊死因子 』 となります。

名前の通り、

ガンを殺す因子として発見された経緯があります。

しかし、

実際にガン細胞周辺に少量存在する場合には、

その効果があるのですが、

TNF‐α(アルファ)を過剰発現しているようなある種のガンにおいては、

この因子に対してガン細胞自身は耐性を作り出し、

むしろガン細胞が大量生産することによって、

免疫系へのバリアーとしているパターンが見られます。

本来はガンに対して抑制的に働くものを、

狡猾なガン細胞が逆手にとって利用している、何度も繰り返されるパターンです。

また、

この辺りはTGF‐β(ベータ)の例にもよく似ています。

こうした働きをする因子を阻害することで、

免疫抑制の解除を狙う、ということです。




最後に、

ガン細胞の表面から組織適合抗原のクラスⅠ分子が喪失する、

『 免疫系からのエスケープ (ガン細胞の反撃 を参照) 』 という、

ガンの作戦に対する戦略を考えてみます。




肝炎の治療薬として知られるインターフェロンには、

この引っ込められたクラスⅠ抗原の提示を促す作用があることが知られています。

インターフェロンには、

大きく1型のα(アルファ)とβ(ベータ)、

2型のγ(ガンマ)があり、

いずれも細胞性免疫を活性化し、

直接的にガン細胞を殺す効果があります。

そのため、

腎細胞ガンやメラノーマ、

脳腫瘍などのガン治療にも使用されている免疫系の薬です。

特にインターフェロン‐γ(ガンマ)は、

細胞性免疫への誘導に重要であり、

抗原提示を増強させる因子でもあります。

ガン細胞の周辺において、ごく微量で作用するので、

局所投与しておいてから、

リンパ球療法を併用する手段も考えられます。




いずれにしても、

ガンが作り出す自らを守る障壁=免疫抑制を解除して、

丸裸にしていく戦略は、

これからのガン治療においては欠かせないものの1つだと考えています。











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間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 16:29ガンになったら

2013年05月17日

ガン細胞の反撃



間 黒助です。




血液中に流れ出したガン細胞がとる最初の防御手段は、

いくつかの細胞が凝集して免疫系の攻撃から身を守ることです。

草食動物や魚が群れをなすのは、

その集団の多数がやられても、

一部が生き残れば種として存続できることを狙ったものですが、

ガン細胞も同じような振る舞いをすることがあります。

これについては、

血行性転移 』 に書いてあるので参考までに。


そして、

血液中で毛細血管にまで辿り着き、足場を得ると、

今度は血液中の血小板を寄せ集め、

鎧のように周辺を囲ませることがあります。

この鎧によって、

血液中に存在するNK細胞などの攻撃から身を守ることができます。


そうして転移先の新たな環境に辿り着き、

そこでさらなる成長に成功する一部のガン細胞は、

実に様々な方法で免疫系からの攻撃をかわします。

代表的な戦略をいくつか紹介しましょう。


まず、

免疫系の攻撃から身を守るために、

ガン細胞は自らの周辺の環境を、

細胞性免疫ではなく、

液性免疫が優位な環境に作り変えようとします。

そのために、

敵であるマクロファージなど一部の免疫細胞を利用します。

マクロファージも、

ガンを攻撃する免疫細胞の1つなのですが、

ガン細胞はこいつを騙して引き込み味方につけてしまうのです。


ガンに対する理想的な免疫系の反応の仕方 』 に書いたように、

マクロファージは細胞性免疫を活性化するためにも重要な役割をします。

様々なサイトカインを生産し、

免疫細胞の活性化をしたり、

逆にその抑制をしたりするなど、

免疫系の働きをコントロールする能力を持っています。

その能力をガン細胞に利用されてしまうのです。


ガンに取り込まれたマクロファージを、

特に 『 腫瘍随伴性マクロファージ 』 と呼びます。

これらのマクロファージは、

ガン細胞の成長を促し、

細胞性免疫を抑制する様々な因子を出し始めるのです。

例えば、

ガン中心部の低酸素状態を解消させるべく、

新生血管促進因子を出したり、

ガンの浸潤、転移、増殖の手助けを行う因子を出したりします。

特に、

マクロファージが関与して生産される、

プロスタグランジンE2(PGE2)などの炎症性サイトカインは、

キラーT細胞の活性化を強力に阻害します。

本来はガンに対する攻撃を行うはずの細胞なのに、

ガンを増殖させる因子を生産する工場のようになってしまうというわけです。


また、

マクロファージと同じように、

ガン細胞に引き込まれ味方にされてしまう別の免疫細胞があります。

リンパ球の仲間で、

制御性T細胞(Treg)と呼ばれる免疫細胞です。


ヘルパーT細胞と同じCD4分子を表面に持つ免疫細胞なのですが、

その本来の仕事は、

過剰になった免疫反応の抑制です。


ガン細胞は、

この制御性T細胞も仲間に引き込み、

キラーT細胞やヘルパーT細胞の活動を直接的にも抑制し、

さらにTGF‐β(ベータ)や液性免疫にバランスを傾けるインターロイキン10などといった、

シグナル伝達物質を生産させるのです。


本来、

TGF-β(ベータ)は、

正常な細胞に対しては増殖を抑制するように作用します。

しかし、

ガン細胞はすでにこのシグナルを受け取るルートを無効にしているため、

自分自身は影響を受けません。

影響を受けるのは、

攻撃に来る正常なリンパ球の方なのです。

これについては、

ガン細胞の増殖が止まらなくなるのはなぜか

を参照して下さい。


本来、

この制御性T細胞は、

体内にあるCD4型のT細胞(Tリンパ球)の10%弱程度しか存在しません。

それが正常な範囲なのですが、

ガンが進行している患者さんの体内では、

この数値が飛び跳ねて何倍にもなる場合があります。


さらに、

ガン細胞は、

NK細胞やキラーT細胞の攻撃に対する、

直接的な体制や攻撃力を獲得することもあります。


一部の成功したガン細胞は、

これらの免疫細胞が攻撃してきた時に押される、

自らの “ 自殺スイッチ 『 Fas 』 ” を無効化することに成功します。

つまり、

いくら自爆スイッチを押されても、

アポトーシスしないように進化します。


挙句の果てには、

この自爆スイッチを押すための 『 Fasリガンド 』 というたんぱく質を、

ガン細胞自らが大量に生産する能力まで獲得し、

周辺にバラ撒くようにまでなります。

そうすると、

攻撃に来たリンパ球自身にも自爆スイッチはあるので、

逆にリンパ球の方が自らの自爆スイッチを押されてしまってアポトーシスしてしまうのです。


Nk細胞の攻撃に対しても、

狡猾なガン細胞は対策を立てます。

NK細胞がガン細胞を認識するためのストレス性のたんぱく質のことを、

全身のパトロール役のNK細胞 』 で書きましたが、

ガン細胞はこのストレス性のたんぱく質を大量に生産し、

周辺にバラ撒く戦法をとることもあります。

攻撃に来たNK細胞の受容体にあらかじめこのたんぱく質を結合させてしまい、

相手を混乱させる対抗策です。

つまり、“ おとり ” です。


また、

キラーT細胞にとって最も厄介なガンの対抗策は、

『 免疫系からのエスケープ 』 と呼ばれるものです。

組織適合抗原のクラスⅠ分子を細胞表面から喪失させてしまうという対抗策です。

さながら “ のっぺらぼう ” のようになってキラーT細胞の目から身を隠すのです。

キラーT細胞は敵を認識して攻撃する細胞なので、

この対策を打たれると相手がどこにいるか見つけられなくなります。

敵を探してウロウロするばかりになるのです。


組織適合抗原のクラスⅠ分子が発現していないこうしたガン細胞に対しては、

非特異的に敵を殺すNK細胞が働くはずです。

NK細胞は組織適合抗原のクラスⅠ分子が無い、

あるいは発現のレベルが低い細胞を攻撃する免疫細胞だからです。


しかし、

一部のガン細胞はさらに、

いくつかある種類の組織適合抗原の大部分を喪失して、

キラーT細胞の目から身を隠し、

同時に、

それでもいくつかの種類を残すことで、

キラーT細胞からもNK細胞からも認識されづらいような戦略をとるものまであります。




……とにかく、敵ながら凄いとしか言いようがありません。




これらのガン細胞の対抗策は、

もちろん、

全てのガン細胞で行われているわけではありません。

患者さんの体内にあるそれぞれのガンがとる戦略は、

患者さん個人個人で大きく異なるものです。

しかし、

ある程度大きくガンが成長し、

転移や再発を起こしたりしている場合には、

間違いなくここまで書いたうちのいくつかの対抗策は併用されているでしょう。


ガンを免疫系の力で抑え込んでいくには、

免疫力の強化はもとより、

ガン細胞が作るこうした 『 免疫抑制 』 の罠を1つ1つ潰していくことが必要です。

実はそれがこそが、

ガンの成長を抑え、

長期普遍状態を作り出すための主たる戦略になると思います。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 11:45ガンになったら

2013年05月16日

ガンに対する理想的な免疫系の反応の仕方



間 黒助




ここ数日書いてきたのが、

ガンに対する理想的な免疫系の反応の仕方です。


一般の方には少し難しかったと思うので、

「原発巣から他の臓器にガンが転移し、

眠っていたガン細胞が少しずつ増殖し始めた状況」 を仮定して、

おさらい的に、

人間の体の中でどんな順番でこの免疫応答が起こってるのかを書いていきます。




血管にまで到達した新たな腫瘍の芽を、

まず血液中をパトロールしているNK細胞が発見します。

すぐさま襲いかかり、

ガン細胞を殺すと同時に自らの活性化を始めます。


インターフェロン‐γ(ガンマ)などのシグナル伝達物質を盛んに生産し、

マクロファージの活性を上げるのです。


NK細胞に殺されたガン細胞は、

活性化した貪食細胞のマクロファージや樹状細胞に食べられます。

そして、

その体内でペプチドにまで分解され、

細胞表面上の組織適合抗原クラスⅠ分子、及びクラスⅡ分子を介して、

T細胞(Tリンパ球)への抗原提示が行われます。


マクロファージや樹状細胞などから抗原提示を受けたキラーT細胞は、

すぐさま自らの活性化を始めます。

また、

同様に抗原提示を受けたヘルパーT細胞も、

自らの活性化を始めます。


活性化されたヘルパーT細胞は、

キラーT細胞をさらに活性化させる刺激を与え、

猛烈に増殖を始めたキラーT細胞は、

教え込まれた抗原を持つガン細胞に特異的に襲いかかり、

次々に破壊していきます。


破壊されたガン細胞は、

同じくマクロファージや樹状細胞に食べられ、

再び抗原提示が行われ、

各種のT細胞(Tリンパ球)がさらに活性化する……というように、

細胞性免疫を優位に傾ける方向への正のスパイラルが起これば、

それが理想的なのです。

体内で常にこのような反応が起きていれば、

再発や転移も全く怖くはありません。


しかし、

ガン細胞は狡猾で頭がいいので、

この免疫系の監視機構の目をかいくぐり、

増殖を始めるものが出てくるのです。

そして、

この免疫系の働きを邪魔するために様々な手を使ってきます。


次回からは、

ガン細胞の行うそうした免疫系への対抗策を詳しく書いていきたいと思います。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 13:45ガンになったら

2013年05月15日

昆虫類はダイエットに有効、良質な脂肪含む=FAO



間 黒助です。




昨日(日本時間)、こんなニュースがありました。






[ローマ 13日 ロイター] 国連食糧農 業機関(FAO)は13日発表した報告書で、

栄養価の高い昆虫類はダイエットに有効である可能性を指摘した。

アフリカやアジアを中心に世界では1900種以上の昆虫が食糧とされている。

同報告書は、

多くの昆虫には食肉と同量のタンパク質とミネラル成分があり、

脂肪は肉よりも健康的だとしている。

FAOのエバ・ミュラー氏によると、

欧州では昆虫をメーンとする料理を提供するレストランも出始めたという。

世界保健機関(WHO)の統計では、

世界の肥満人口は約5億人で、

1980年からほぼ倍増している。

同報告書を執筆した1人であるオランダ・ワーヘニンゲン大学のArnold van Huis氏は、

昆虫類を食べることについて、

「西側諸国では文化的偏見がある」

と指摘。

ただ、

こうした偏見は心理的なもので、

被験者に食肉100%のミートボールと、

食肉と、

ゴミムシダマシの幼虫でできたミートボールを目隠しで食べてみてもらったところ、

10人のうち9人が幼虫入りのミートボールを好んだとの結果が出たという。






このニュースを見て思ったのは、

日本の都道府県別平均寿命で、

男女共に首位である長野県のことです。


今年、

2013年に厚生労働省が発表した最新の都道府県別平均寿命で、

男女とも首位に輝いたのは長野県でした。

男性が80.88歳、

女性 は87.18歳。


男性の場合、

2位以下は滋賀県、福井県、熊本県と続きます。


女性は2位が島根県、3位に沖縄県、

そして熊本県、新潟県。


長野県はまさに長寿ダントツ第1位でした。


長野県から見えてくる “ 長寿の秘訣 ” は何なんでしょうか。


平成22年の厚生労働省 『 都道府県別年齢調整 死亡率 』 でトップに輝いた長野県。

年齢構成を調整した10万人当たりの死亡数が、

女性248.8人、

男性447.3人でした。

つまり “ 日本一死亡率が低い ” のは長野県なのです。


その 『 長寿の秘訣 』 を考えると、

標高が高く酸素が薄いことが挙げられます。

都道府県別平均寿命は2011年のデータですが、

長生きと酸素の関係

に簡潔に書いてありますのでご参照下さい。


また、

長野県は標高が高く坂道がとても多いのにお年寄りがよく歩いています。

アップダウンの激しい地形は巨大なジムのようなもので、

買い物に出るだけで運動ができます。

標高が高いということは、

それだけ太陽の光を浴びる量も増え、

精神安定に寄与する働きのあるセロトニンの生成を促進するんです。


農業の形も長寿を促しているでしょう。

高原野菜で有名な長野県は、

農業に従事する高齢者がとても多くて、

仕事をしている人の年齢は全国で最高齢と言われています。

長野は棚田など斜面の耕地が多いので、

昔と同じように鋤や鍬を使って農作業をします。

元気なら自分の体力に合わせて、いくつになってもできます。

農業は明確に四季の変化を体で感じ、

季節の変わり目がよく分かりますよね。

旬のものをよく食べ自然と連動して生きていくことで、

感性豊かになり、

そういった精神的なものの影響で老化が遅くなるんでしょう。


さらに長野県は、

虫が豊富に取れるなどの食生活も長寿の大きな要因になっていると思います。

昔、日本は食肉禁止時代があったほど、

全国的にたんぱく質不足の不遇の時代が続いた中、

長野県は蜂の子やイナゴの佃煮を食べてたんぱく質を摂取していました。

中高年以上の方は、

今も普通に蜂の子やイナゴの佃煮を食べています。

長寿で有名な沖縄(残念ながら現在は女性だけ)は豚肉から摂っていました。

高たんぱくは老化防止のビタミンEやAが豊富です。


こういった事情の裏付けから長寿県1位が導き出されるのだと思います。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 12:25ガンやガンの新しい治療法に関するニュース記事

2013年05月14日

抗原提示細胞はガンとの闘いに欠かせない司令塔



間 黒助です。




組織適合抗原のクラスⅠ分子は、

ガン細胞の表面上にもあるので、

キラーT細胞に直接、刺激を与えることができます。

しかし、

ヘルパーT細胞の細胞表面にはCD8分子は存在しないため、

ヘルパーT細胞が組織適合抗原のクラスⅠ分子と結合することはできません。


ヘルパーT細胞の細胞表面にある分子は、

『 CD4分子 』 と呼ばれるもので、

このヘルパーT細胞を刺激し活性化できるのは、

組織適合抗原のクラスⅡ分子という別の組織適合抗原だけです。


このクラスⅡ分子と呼ばれる組織適合抗原は、

一般の細胞の細胞表面には存在しません。

したがって、

正常な細胞から異常化したガン細胞の表面にも存在しません。

この組織適合抗原のクラスⅡ分子は、

抗原提示細胞のマクロファージや樹状細胞の表面のみに存在するものです。


これら抗原提示細胞は、

抗原となり得るたんぱく質を細胞内に取り込むと、

ペプチドの状態にまで消化し、

細胞表面上の組織適合抗原のクラスⅡ分子に結合させて、

特にヘルパーT細胞に抗原提示を行います。

すると、

T細胞(Tリンパ球)の活性化とその仕組み

に書いたように、

1型ヘルパーT細胞(Th1)が活性化し、

間接的にキラーT細胞などの活性化を行う流れができます。


また、

マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞の表面には、

この組織適合抗原のクラスⅡ分子と同時に、

クラスⅠ分子も存在しています。

そのため、

キラーT細胞を直接的に活性化することも行われます。


さらに言えば、

マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞の表面には、

キラーT細胞に必要な活性化刺激とは

に書いた、

補助刺激を行うためのB7分子もあります。

B7分子が、

キラーT細胞とヘルパーT細胞の細胞表面にあるCD28受容体に結合し、

このルートでも活性化刺激が与えられるわけです。


要するに、

マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞は、

1型ヘルパーT細胞(Th1)と同時に、

キラーT細胞に対してもガン細胞の特徴を教え込み、

共に活性化できる強力な司令塔なのです。

ガンに対して、

効果的で強力な免疫系の攻撃態勢を築き上げるには、

この抗原提示細胞をうまく巻き込んでいかなければいけない、

ということです。


特に樹状細胞は、

ガン細胞を捕食する能力は低いですが、

抗原の提示に特化した細胞です。

近年、

話題になることも多い 『 樹状細胞ワクチン 』 と呼ばれるものは、

この樹状細胞にあらかじめガン抗原を取り込ませたものを、

患者さんの皮下に注射するのが一般的です。


これらのワクチンとして投与された樹状細胞は、

その後、

リンパ節に移動して多くのT細胞(Tリンパ球)に抗原提示を行い、

キラーT細胞やヘルパーT細胞を活性化させます。

これにより、

ガンの仕掛ける免疫抑制を外し、

患者さんが本来持つガンに対する免疫力を活性化させることを狙った治療法なのです。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 11:57ガンになったら

2013年05月13日

キラーT細胞に必要な活性化刺激とは



間 黒助です。




ガンに対する免疫の主役は活性化したキラーT細胞です。


では、

キラーT細胞が活性化するために必要な刺激、

T細胞(Tリンパ球)の活性化とその仕組み

に書いた “ 活性化刺激 ” の仕組みはどうなっているのかと言うと、

T細胞(Tリンパ球)に活性化刺激を与えるルートは複数あります。

現実の人間社会、

例えば軍隊などでは、

命令系統は一本化されていた方がいいのですが、

リンパ球の活性化に関しては、

刺激が重なることでより強力に活性化される、

とイメージして欲しいです。

また、

ここで言う “ 刺激 ” とは、

「活性化しろ!」

という命令だと思って頂ければ比較的分かりやすいと思います。


まず最初に、

T細胞(Tリンパ球)の増殖因子、

インターロイキン2による活性化刺激があります。

インターロイキン2は、

活性化した1型ヘルパーT細胞(Th1)などから主に生産されます。

また、

活性化したキラーT細胞自身からも生産されるので、

ここでも、

インターロイキン2で活性化したキラーT細胞が、

さらに自らを活性化させるというフィードバック的な反応が起きるわけです。


次に、

組織適合抗原を介した活性化刺激があります。

キラーT細胞の細胞表面にあるT細胞受容体が、

ガン細胞の表面にある組織適合抗原のクラスⅠ分子に結合すると、

T細胞受容体とCD8分子を介した2つのルートからの活性化刺激が、

キラーT細胞の内部へと伝わります。


これらの活性化刺激に加えて、

キラーT細胞を十分活性化させるには、

さらに “ 補助刺激 ” と言われる刺激が必要となります。

代表的な補助刺激としては、

『 B7分子 』 と呼ばれる分子を介したものがあります。


キラーT細胞上にあるCD28という受容体に、

このB7分子が結合して刺激を伝えるのですが、

このB7分子はマクロファージや樹状細胞などの、

抗原提示細胞の細胞表面上にしか存在しないのです。


なので、

このルートからの活性化刺激を受けるためには、

どうしても抗原提示細胞の関与が必要となります。
















※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

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間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 14:18ガンになったら

2013年05月12日

T細胞(Tリンパ球)の活性化とその仕組み



間 黒助です。




ガンに対する免疫系の働きで、

主役を務めるのは何と言ってもT細胞(Tリンパ球)です。





上図でも分かるように、

T細胞(Tリンパ球)にも色々ありますが、

中でも直接的にガン細胞を殺す役割を担うのが、

T細胞(Tリンパ球)の一種 『 キラーT細胞 』 です。


ウイルスは、

細胞質や細胞膜を持たず、

遺伝子とそれを守るたんぱく質の殻のみで存在する、

生物と非生物の中間に位置する存在です。

それぞれのウイルスの種類ごとにお気に入りの細胞に入り込んで寄生し、

その細胞のDNAを使って自らのコピーを生産する必要があります。


細胞の中に侵入してしまったウイルスには、

B細胞(Bリンパ球)が放出し血液の中で活躍する抗体は無力な存在になります。

そのため、

そこから先はT細胞(Tリンパ球)の仕事です。


ウイルスが細胞に寄生し、

自らの複製を作って増殖している時、

ウイルスの遺伝子の影響で、

通常の細胞には存在しないたんぱく質が作られます。


寄生された細胞は、

この異常なたんぱく質をアミノ酸の短い鎖(ペプチド)にまで分解し、

全身のパトロール役のNK細胞 』 に書いた、

組織適合抗原のクラス I 分子を介して細胞表面に抗原を提示します。

これによって、

T細胞(Tリンパ球)に自らを侵しているウイルスの存在と情報を教えるのです。


遺伝子に異変が起こってしまったガン細胞にも、

これと同じような仕組みで、

その細胞表面に抗原が提示されるわけです。


キラーT細胞は、

その表面に 『 T細胞受容体 』 という、

活性化刺激を受けるための受容体が存在しています。

このT細胞受容体も、

B細胞(Bリンパ球)の表面抗体と同じような仕組みになっていて、

事実上、無限大に近い種類が存在しています。


体内の様々な細胞の表面には、

血液などを通して色々なリンパ球が絶え間なく接触してきます。

ウイルスに寄生されたり、

ガン化が始まったりしていて、

細胞表面に抗原が提示された細胞にも、

そのうちにその抗原とピッタリ結合できる(特異的に結合できる)キラーT細胞が現れます。

すると、

そこで免疫反応が起こり出すわけです。


この状態になると、

キラーT細胞にはその細胞表面にあるT細胞受容体を通して、

“ 活性化しろ ” というシグナルが細胞内部に伝えられます。

ちなみに、

このようなシグナル、あるいは命令のことを、

『 活性化刺激 』 と呼びます。


活性化刺激を受けたキラーT細胞は、

激しく分裂・増殖して、

自分と同じ形のT細胞受容体を持つキラーT細胞の数を急激に増やします。

これによって、

提示された抗原を持つ細胞に特異的な攻撃性を持つ、

兵隊の数を急激に増やすのです。


こうして活性化したプロセスと同時に、

キラーT細胞は結合した細胞を殺しにかかります。

活性化したキラーT細胞は、

通常の血液中にある時の丸い形から、

突起を出した形に変形し、

標的となるガン細胞に接触していきます。

そして、

ガン細胞に特異的に接着すると、

パーフォリンと呼ばれるたんぱく質を打ち込んで細胞に穴を開け、

そこにグランザイムと呼ばれるたんぱく質分解酵素を流し込み、

標的の細胞核のDNAに攻撃を仕掛けます。


また、

細胞表面にあるアポトーシスを誘導するFas分子のスイッチをONにすることで、

その標的細胞を自殺させます。

この辺りの仕組みは、

最後は心の強さが命を左右する

でも書いたとおりです。


そして、

このように標的とした細胞の破壊が終わると、

キラーT細胞はまた次の標的細胞を探し始めるのです。


キラーT細胞を主役とするこのような細胞障害性の免疫のことを、

『 細胞性免疫 』 と言います。


B細胞を主体とした免疫反応を 『 液性免疫 』 と呼ぶが、

特にガンに対して免疫系が効果的に働くには、

この2つの免疫の働きを、

“ 細胞性免疫が液性免疫より優位に立つ ” 状態に誘導することが重要になってきます。


キラーT細胞の働きを助けるのが 『 ヘルパーT細胞 』 です。

ヘルパーT細胞は、

その働きによって1型ヘルパーT細胞(Th1)と、

2型ヘルパーT細胞(Th2)に分けられます。

このうちの1型ヘルパーT細胞(Th1)は、

キラーT細胞の活性を助けて、

細胞性免疫の力を増強します。


では、

もう1つの2型ヘルパーT細胞(Th2)はどうかと言うと、

こちらはB細胞(Bリンパ球)の活性を助けて、

抗体の生産を促し、

免疫の方向性を液性免疫の方に傾けるのです。

この作用は、

キラーT細胞を主体とする細胞性免疫には “ 抑制的 ” に働きます。

そのため、

ガン細胞への攻撃性を弱める結果となってしまいます。


つまり、

ガンへの免疫系の働きの主役を務めるキラーT細胞の働きを高めるためには、

細胞性免疫と液性免疫のバランスを細胞性免疫の方に傾けなければならない、

ということです。


そのためには、

1型ヘルパーT細胞(Th1)がどんな方法でキラーT細胞を助けているか、

その作用に注目する必要があります。


1番重要なのは、

1型ヘルパーT細胞(Th1)が、

インターロイキン2というシグナル伝達物質を生産することです。


このインターロイキン2は、

NK細胞などを活性化させるほか、

キラーT細胞も活性化させるサイトカイン(調整因子/シグナル伝達物質)です。


また、

1型ヘルパーT細胞(Th1)は、

インターフェロン-γ (ガンマ)というシグナル伝達物質も生産します。


このインターフェロン-γ (ガンマ)は、

抗原提示細胞であるマクロファージや樹状細胞の活性化を促すサイトカインです。

そして、

1型ヘルパーT細胞(Th1)の生産するインターフェロン-γ (ガンマ)によって、

活性化されたマクロファージや樹状細胞は、

インターロイキン12を生産します。

このインターロイキン12というシグナル伝達物質は、

複雑な経路を経て 『 CD4分子 』 という分子を持つ未熟なヘルパーT細胞を、

細胞性免疫を活性化させる1型ヘルパーT細胞(Th1)に分化させるのです。


つまり、

キラーT細胞の活性を助ける1型ヘルパーT細胞(Th1)の数を増やすことで、

フィードバック的にキラーT細胞を活性化するのです。


このインターロイキン12は、

同じようにNK細胞なども活性化させます。

活性化されたNK細胞もまた、

インターフェロン-γ (ガンマ)を生産し、

またまた1型ヘルパーT細胞(Th1)の数が増えます。

このように、

1度、細胞性免疫の方に免疫機能の方向性が傾くと、

連続して活性化の反応が繋がっていくのです。


これに対し、

液性免疫の手助けをする2型ヘルパーT細胞(Th2)は、

インターロイキン4やインターロイキン10といったシグナル伝達物質を生産します。

これらのサイトカインは、

同じ 『 インターロイキン 』 という名前は付いていますが、

逆にキラーT細胞の働きを抑えてしまいます(B細胞<Bリンパ球>の働きは活性化します)。


こうしたヘルパーT細胞の働きを鏡みると、

ガンに対して有効な細胞性免疫を強めるためには、

『 1型ヘルパーT細胞(Th1)の活性を促し、

2型ヘルパーT細胞は逆にその活性を抑えることが望ましい』

ということが導き出されるのです。











※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

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そのためには少しでも情報を集め、

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少しでもお役に立てればと思っております。




間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 19:03ガンになったら

2013年05月11日

全身のパトロール役のNK細胞



間 黒助です。




リンパ球の別の仲間 『 NK細胞 』 は、

ガン発生の予防、

あるいはガンの成長スピードを抑えるのに役立つと考えられています。


実際に、

動物実験で人為的にNK細胞が無いマウスを育てると、

ガンの発生率が大幅に高まります。

また、

ガンの進行のスピードも速まってしまうことが知られています。

NK細胞は常に血液の中を巡り、

全身をパトロールしている免疫細胞なのです。


そうして、

異常になった細胞を見付けだしては次々と殺傷し、

ガンの発生防止に寄与しているとされます。


そしてこの時、

NK細胞はリンパ球の仲間でありながら、

ウイルスに感染した細胞やガン細胞を、

特異的な認識なしに殺すことができます。


どうしてそんなことができるのかと言うと、

一般的には、

組織適合抗原(特にクラスⅠ分子と呼ばれるもの)が、

細胞表面に正常なレベルで提示されていない細胞を標的にすると考えられています。


そしてもう1つ、

細胞表面に現れる、

ストレス関係のたんぱく質を感知する能力も備えているとされています。


人間の細胞は、

ガン化のような生理的なストレスを受けると、

組織適合抗原のクラスⅠ分子を介し、

その細胞表面にストレスを受けている目印の “ 旗 ” を立てます。

NK細胞は、

これらの一連の旗(たんぱく質)を認識するための受容体を有していて、

これによってガン化した細胞を見付け出すことができるのです。


NK細胞は、

自らは主に※インターロイキン2というシグナル伝達物質によって増殖・活性化されます。

(※インターロイキンは免疫細胞が作り出す免疫細胞間の調整因子)

また、

インターロイキン12というシグナル伝達物質の刺激によっても活性化され、

活性化されると、

今度はインターフェロン-γ(ガンマ)というシグナル伝達物質の生産力を高めるようになります。


このインターフェロン-γ(ガンマ)は、

ウイルス等の増殖を抑える※サイトカインの1つであり、

直接的にもガンを攻撃する因子です。

(※調整因子/シグナル伝達物質)


また、

活性化したNK細胞は、

細菌や毒素、

あるいはガン細胞などに結合した抗体医薬品の抗体を認識し、

その抗体の定常領域に取り付いて、

その細胞などを殺傷する役目も持ちます。


様々な方法でガン細胞などを殺す能力を持ち、

しかも、

抗原提示細胞からの抗原提示を受ける必要なく、

非特異的に異物やガン細胞を殺すことから、

ナチュラルキラー細胞、

略してNK細胞と呼ばれるのです。











※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

ご質問やご相談のある方は、

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真摯なご質問・ご相談には必ず返信致します。



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質問内容を控えてブログの『コメントへの返答』カテゴリーで随時アップします。


少しでも心配事があるなら遠慮せずにコメント下さい。

そんな少しのことで今後が、未来が変わるかもしれません。


僕がご相談やご質問に対してどう返答しても決めるのは自分です。

そのためには少しでも情報を集め、

後悔しない選択をして下さい。


少しでもお役に立てればと思っております。




間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:35ガンになったら

2013年05月09日

リンパ球が適応免疫を担う



間 黒助です。




ここ数日で、

ガン細胞を殺せない免疫細胞はない

ガンに対して重要な細胞は何か

自然免疫

貪食細胞マクロファージ

で説明した “ 自然免疫 ” 系の細胞は、

異物であれば何であれ、すぐに攻撃を加えます。

敵を選別し特異的に反応する、ということはありません。

これに対し、

そうした特異的な攻撃を行う白血球がリンパ球です。


例えば、

よく知られているように、

子供の頃、1度麻疹(はしか)にかかると、

たとえ大人になってもそれ以降は2度とかかることはありません。

これは、

免疫系が1度感染したバクテリアやウイルスに対して、

その特徴を記憶していて、

再度同じバクテリアやウイルスが体内に侵入してきた時には、

すかさず対応できるように準備しているためです。


このように、

相手を特異的に認識して反応する免疫の働きのことを、

“ 適応免疫 ” と呼びます。

そして、

この適応免疫の働きを担う免疫細胞が、

リンパ球と呼ばれる一群の白血球です。







上図を確認していただくと分かるように、

リンパ球には様々な種類があります。

今日はまず、

このうちのB細胞(Bリンパ球)について説明をしていきます。




【B細胞(Bリンパ球)】


細菌、あるいは細菌が放出する毒素などに対し、

武器になる “ 抗体 ” を生産して血液中に放出し、

対抗していくのがB細胞(Bリンパ球)の仕事です。


細菌は、

細胞表面上に特徴的な分子を表しています。

これを “ 抗原 ” と呼び、

抗体の標的となります。

また、

細菌の放出する毒素も特徴的な分子構造をしていて、

その一部は生体の細胞やたんぱく質に結合して機能を損なわせ、

その結果が毒として働きます。


となれば、

細胞やたんぱく質に結合する部分を塞いでしまえば、

毒素としての仕事ができなくなります。

この状態が毒素の中和です。


こうした仕事を受け持つのが抗体の役目なのです。


抗体が取り付くと、

取り付かれた細胞は本来の機能を発揮できなくなるほか、

抗体自体の作用で障害されたり、

マクロファージなど他の免疫細胞が、

取り付いた抗体を目印に捕食しやすくなったりします。

(これを抗体依存性細胞障害作用、略して 『 ADCC 』 といいます)


『 適応免疫 』 の中でも、

こうしたB細胞(Bリンパ球)と、

それが生成する抗体中心とした免疫システムのことを、

特に 『 特性免疫 』 と呼びます。


細菌や毒素が持つ抗原は、

それぞれが特徴的な形をしています。

そのため、

そこに取り付くには特異的に結合できる抗体が必要になります。


たんぱく質を理解する 』 で書いた、

鍵と鍵穴の関係のようなものです。


体内を巡るB細胞(Bリンパ球)の表面には、

細胞表面抗体と呼ばれる抗体が多数あり(1つのB細胞上の抗体は同じ種類)、

この抗体の形が異なるB細胞(Bリンパ球)の種類も無数にあるため、

目的の細菌や毒素などが持つ抗原に特異的に結合できる抗体が必ずあります。


ただし、

1つのB細胞(Bリンパ球)は1種類の抗体しか生産できません。

そこで、

目的の抗原とピッタリはまる抗体を持っているB細胞(Bリンパ球)が抗原を認識すると、

激しく活性化して同じ抗体を作り出せる細胞を増殖させ、

必要な抗体を大量に生産し始めます。

そしてそれを血液中に放出し始めるのです。


B細胞(Bリンパ球)が敵を認識し、

対抗できる抗体を大量に生産するこの過程には、

ある程度時間が掛かります。

その間にも細菌やバクテリアなどは増殖しているので、

血液中に十分な量の抗体が放出されるまでにはタイムラグがあります。

バクテリアなどによる感染症にかかったとき、

完全に治るまでに多少時間が掛かるのは、

こうした仕組みによる部分もあるでしょう。


抗体のイメージは、

英語の 『 Y 』 の字を思い浮かべて下さい。

二股に分かれた先が「可変領域」、

下の部分が「定常領域」と呼ばれます。

そして、

このうちの可変領域は遺伝子の働きによって無数の形をとることができ、

それによって事実上、

あらゆる抗原に対応できる多様性を有しています。





①中和作用

対象の受容体や特徴的な分子構造に取り付き、機能を阻害する作用。


②ADCC作用(抗体依存性細菌障害作用)

病原体などに付着した抗体を目印にマクロファージなどの他の免疫細胞を呼び寄せる作用。


③対象の細胞を傷害する作用(CDC活性)

抗体が付着することで活性化した補体系により、対象の細胞が破壊される作用。




この抗体を使用し、

ガン治療に応用している薬があります。

『 抗体医薬品 』 とか 『 抗体製剤 』 などと呼ばれる薬で、

ガン細胞などが現す特異的な抗原のみに作用する抗体を使うことで、

その働きを阻害したり、傷害したりすることを狙うものです。

特定の種類の単一の抗体を使うため、

『 モノクローナル抗体製剤 』 とも呼びます。

いくつかの例を挙げましょう。




乳ガンの性質によっては、

『 HER2 』 と呼ばれる細胞増殖因子の受容体が、

ガン細胞の表面に過剰に現れているものがあります。

このブログでも何度か取り上げた 『 ハーセプチン 』 は、

このHER2受容体を抗原として、

特異的に作用する抗体を利用したモノクローナル抗体製剤です。


また、

こうした抗体を作るB細胞(Bリンパ球)自体もガン化することがあります。

『 B細胞リンパ腫 』 という種類のガンですが、

そのうちの非ホジキンリンパ腫という種類のガンに対して、

高い効果があるとされるのが 『 リツキサン(一般名:リツキシマブ) 』 です。

『 CD20 』 という、

B細胞(Bリンパ球)の特異的な表面抗原を目印にするモノクローナル抗体製剤です。


これらの薬剤では、

抗体が結合したガン細胞に対し、

この抗体の定常領域にNK細胞やマクロファージなどが結合することで、

ガン細胞を殺傷するADCC作用もあります。

それにより、

さらなる抗腫瘍効果も期待できるでしょう。


代表的な2つの薬を挙げましたが、

モノクローナル抗体製剤は効果的で副作用が少ない薬として、

近年では従来型の抗がん剤に取って代わる勢いを見せているほどです。




参考になるよう、

2012年9月現在で、

日本国内で使用されている主なモノクローナル抗体製剤を書いておきます。




①アービタックス(一般名:セツキシマブ)

抗原の種類 : EGFR

適応 : 大腸ガン


②アバスチン(一般名:ベバシズマブ)

抗原の種類 : VEGF

適応 : 大腸ガン、肺ガン、新生血管阻害


③ランマーク(一般名:デノスマブ)

抗原の種類 : RANKL

適応 : ガンの骨転移


④アクテムラ(一般名:トシリズマ)

抗原の種類 : IL-6

適応 : 関節リウマチ


⑤レミケード(一般名:インフリキシマブ)

抗原の種類 : TNF-α

適応 : 関節リウマチ


⑥シンポニー(一般名:ゴリムマブ)

抗原の種類 : TNF-α

適応 : 関節リウマチ


⑦ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)

抗原の種類 : TNF-α

適応 : 関節リウマチ




※モノクローナル抗体を使用した抗体医薬品は分子標的薬に含まれます。

このブログでも何度か取り上げたタルセバやイレッサなども同じ分子標的薬ですが、

抗体は使用していない種類のものです。


※ガンではなく関節リウマチの治療用に保険適応となっている薬も4つ挙げていますが、

これは、これらの薬が、

ガンの作る免疫抑制の解除に大いに役立つ可能性が指摘されているためです。

あくまで参考として載せてみました。



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:23ガンになったら

2013年05月08日

貪食細胞マクロファージ



間 黒助です。




体内に侵入した異物を排除する 『 自然免疫 』 の働きは、

顆粒球とは種類が異なる白血球 『 単球 』 によって担われています。


単球は、

血液中では丸い形をしていますが、

組織に出ると 『 マクロファージ 』 というアメーバ状の貪食細胞に変化します。

異物に遭遇すると、

異物を追いかけて組織内に移行し、

この時にマクロファージに変身を遂げるのです。


マクロファージは、

異物を組織内に取り込み、

補足した異物をじっくりと時間を掛けて料理していきます。

ここまでは顆粒球とそれほど変わらないのですが、

マクロファージはその過程で、

さらに別の種類の白血球 『 リンパ球 』 に、

異物の存在やその情報を知らせる 『 抗原提示 』 を行うのが特徴的です。

このように、

別の免疫細胞に異物の存在やその情報を知らせる働きを持つ細胞を、

『 抗原提示細胞 』 と呼びます。


マクロファージはその代表格ですが、

同じ単球から変化する 『 樹状細胞 』 も、

その抗原提示細胞の1つです。

異物を捕食する能力はマクロファージに比べて弱いですが、

分解した異物のたんぱく質を細胞表面に並べ、

リンパ球に敵の存在や特徴を知らせる抗原提示能力は、

マクロファージより強いです。

そのため、

この樹状細胞を主役にして使う免疫治療もあります。


マクロファージは好球中と違い、

異物を消化した後もアポトーシスをしません。

仕事を終えたら、

すぐに次の標的に向かっていきます。

その様子が、

異物を貪り食う様に例えられて 『 貪食細胞 』 と呼ばれるのです。


この他、

マクロファージは体内で不要になった老廃物、

例えば損傷した細胞や死んだ細胞、

あるいは役目を終えた赤血球などを処理する仕事も受け持っています。

また、

ガン細胞を見付けた場合には、

自ら直接攻撃を仕掛けることもあります。


さらには、

マクロファージは、

自他の細胞に様々な命令を伝えるシグナル伝達物質を生成する能力も持っています。

特定の刺激を受けると、

ガンに対する免疫系のシステムを機能的に働かせたり、

あるいは逆に、

そうした働きを阻害したり抑制したりする命令を伝える能力があります。

ガン細胞はこの部分に浸けこんでくるのです。















※ガンについてや、

ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、

ご質問やご相談のある方は、

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真摯なご質問・ご相談には必ず返信致します。



【間 黒助へのご質問・ご相談はこちらまで】

kurosukehazama@yahoo.co.jp



コメントは“承認後に受け付ける”の設定になってますので、

コメントに書いた内容がいきなり公開されることはありません。

公開を控えて欲しい場合はそう書いてもらって結構です。

公開を控えて欲しいというコメントへの返答は、

質問内容を控えてブログの『コメントへの返答』カテゴリーで随時アップします。


少しでも心配事があるなら遠慮せずにコメント下さい。

そんな少しのことで今後が、未来が変わるかもしれません。


僕がご相談やご質問に対してどう返答しても決めるのは自分です。

そのためには少しでも情報を集め、

後悔しない選択をして下さい。


少しでもお役に立てればと思っております。




間 黒助



  

Posted by ブラックジャックの孫 at 12:15ガンになったら

2013年05月07日

自然免疫



間 黒助です。




抗がん剤治療を行う際、

常に注意を促されるのが血液検査での 『 WBC 』 という名称の数値です。

これは 『 White Blood Cell (白血球) 』 の頭文字をそのまま取ったものなので、

白血球の数を示す数値です。

この数値が低くなると、

患者さんの免疫力が低下し過ぎてしまうので、

抗がん剤治療を続けられなくなります。

そのため抗がん剤治療では、

治療の途中で白血球の数が戻るのを見定める、

休みの期間を設けるのが通常です。


そして、

その白血球の大部分、全体の4分の3程度を占めるのが顆粒球です。

顆粒球は寿命が2週間程度と短いですが、

その代わりに絶えず骨髄で生産されて血中に送り出されています。

大きく好中球、好酸球、好塩基球の3種類に分けられ、

このうちの好中球が圧倒的多数を占めます。

好中球だけでも、

白血球全体の60~70%を占めます。


怪我をすると、

傷口などからバクテリアが体内に侵入しますが、

このとき1番に駆けつけて闘いを始めるのがこの顆粒球です。

中でも好中球は、

主に細菌や真菌などのバクテリアに対して働きます。

異物を見付けると自らの細胞内に取り込んでしまい、

強力に消化・殺菌・分解し、

仕事が終わると自らアポトーシスします。

傷口に白っぽい黄色の膿が溜まることがありますが、

あれは異物と闘った好中球の死骸の集まりなのです。


顆粒球は、

体内に侵入した自分とは異なる異物(非自己)に対しては、

何であれ即座に攻撃に入ります。

このような免疫系の反応を 『 自然免疫 』 と呼んでいます。


ちなみに、

この顆粒球の細胞が異常になり、

増殖が止まらなくなると骨髄性白血病と呼ばれる白血球のガンになります。

また、

白血球のガン=白血病は存在しますが、

赤血球のガンはありません。

これは、

赤血球には細胞核、つまりは遺伝子が収まる核そのものが無く、

遺伝子も存在しないためです。

ガンは遺伝子の異常によって発生する病気なので、

遺伝子が無ければ発生しようがないのです。








  

Posted by ブラックジャックの孫 at 15:09ガンになったら