2013年05月29日
ガン化の始まり
間 黒助です。
昨日書いた 『 マクロファージの裏切り 』 の続きになりますが、
切り傷が治っていくとき、
傷口のところで肉が盛り上がりますが、
あの肉の盛り上がりは、
実質的に腫瘍形成と同じです。
そして、
その過程で主役を演じてるのがマクロファージなんです。
普通の人が知っているマクロファージは、
異物をひたすら食べていく大食漢細胞としてのマクロファージですが、
マクロファージにはもう1つの大きな役割があります。
それは切り傷ができて、
それを大急ぎで修復しなければならないというときに、
その現場監督として次々に命令を発して現場を仕切っていく役割です。
そういう傷口の修復手順は、
DNAの中に 『 創傷治癒プログラム 』 として埋め込まれています。
そのプログラムに従って、
一連のサイトカイン(信号物質)を次々に出していくのがマクロファージなんです。
傷口の修復過程におけるマクロファージの最も大切な役割は、
異物を食べることではなく、
信号物質を次々に発することで、
大きな創傷治癒プログラムを円滑に走らせることにあるのです。
マクロファージの一連の裏切りと取れる行動が、
実はマクロファージが本来の機能を果たしているに過ぎないのです。
通常、傷口ができると、
体から盛んに救援を求める信号物質が放出されます。
この物質を感知するとマクロファージなどの免疫細胞が集まります。
マクロファージは細胞の移動や成長を促す物質を放出します。
こうした物質に刺激を受けて皮膚の細胞が移動を開始し傷口を修復します。
要するに、
マクロファージが発出する一連のサイトカインによって始まる創傷治癒プログラムが、
ガン化の引き金を引いているということなのです。
そしてそれは同時に、
転移能力獲得の第1歩になっているということなのです。
マクロファージが通り道の異物を食べることで通路を切り開いてくれるから、
ガン細胞は移動能力(転移能力)を獲得するのだという意味ですが、
それはレベルの低い説明で、
マクロファージが信号物質(サイトカイン)を次々に出してくれるから、
その信号物質の発するサインに従って、
一連のプログラムが進行し、
それがガン化と転移をもたらしているというのが、
正しい説明です。
ここで大事なことは、
ガン化の第1歩は、
体内で起きた何か異常な現象から始まっているのではなく、
全く正常な過程の一部として踏み出されているということです。
人間の体の表の皮膚も、
内側の皮膚も、
しょっちゅう何かで傷がつきます。
傷がつくのも日常茶飯事の現象なら、
その修復過程が始まるのもごく当たり前のことです。
そして、
無事に修復過程が終われば、
傷口の跡は跡形もなく消えてしまいます。
しかし大きな傷口の跡が肉が盛り上がったままいつまでも消えないで残ることがあります。
腫瘍形成の最初の1歩はそれと同じ現象と言えるのではないでしょうか。
胃腸の粘膜が繰り返し傷付けられ、
その修復が何度も何度も繰り返されるうちに、
治癒しきれない創傷跡が残るようになりガンが発生するというわけです。
そういう傷を胃腸の内側になるべくつけない方がいいから、
刺激が強い食物、
発ガン性物質を含む食物をあまり摂取するなと言われるわけです。
しかし、
そういう食物にしても、
度が過ぎなければ食べても一向に構いません。
ガン化のリスクは統計的に高まりますが、
すぐにガンができるということではありません。
Posted by ブラックジャックの孫 at 11:28
│人間はなぜガンになるのか