2014年02月16日

脳が脂肪酸を使わない理由



間 黒助です。




なぜ脳はブドウ糖を栄養源にしているのか

の続きですが、

脳がエネルギー源として利用しているのはブドウ糖とケトン体で、

脂肪酸は利用しないと書きましたが、

ブドウ糖とケトン体は水溶性物質、脂肪酸は脂溶性物質です。


この違いは言い換えれば、

細胞膜(=脂質二重膜)を自由に通れるか通れないかの違いです。

脳が選んだのは水溶性のブドウ糖とケトン体であり、

脂溶性物質は拒絶したと考えられます。


脳の仕事とは何でしょうか。

それは、

視覚や聴覚などの感覚器から入る膨大な情報を分析し、

それを過去の記憶と照合し、

現在の状況を判断し、

必要な行動を決め、

その命令を手足の筋肉に送ることです。


しかも、

体を取り巻く状況は刻々と変化するので、

その時々に応じて適切な行動を判断し、

逐一、筋肉に指令を出さなければいけません。


人間の脳には250~350億個もの神経細胞が詰まっていて、

それらはシナプスという接合部で相互に結合しています。

そして、

情報が入るたびに、

シナプスから神経伝達物質が放出されて、

隣の神経細胞にキャッチされ、

その神経細胞が別の神経細胞に情報伝達して、

巨大な情報ネットワークを作っています。

つまり、

僕達の脳では常に、

神経伝達物質が飛び交っていることになります。


そんな情報伝達物質が飛び交う修羅場に、

細胞膜を通過できる脂肪酸があったら、どうなるでしょうか。

もちろん、

きちんとしたルールの下で情報を伝え合っている情報伝達物質からすると、

ルールを無視して動き回る脂肪酸は邪魔なものでしかありません。


それどころか、

多種多様な脂肪酸の中には、

情報かく乱物質として作用するものもあります。

これは、

情報収集、統合、分析、行動を決定する器官としては、

致命的なバグの原因になりかねません。


だから脳は脂肪酸が入らないように工夫をしました。

脳を取り巻く血管に 『 血液脳関門 』 という関所を作り、

ブドウ糖とケトン体は通すが、

脂肪酸は門前払いするというシステムを作り上げたわけです。


このような構造物は、

脳だけではなく末梢神経系にも存在し(血液神経関門)、

これも血液脳関門とほぼ同等の機能を持っているらしいです。

要するに脳や末梢神経にとって、

脂肪酸は使いたくても使えないエネルギー源なのです。


ちなみに、

脳神経関門は脂肪酸を通さないと書きましたが、

厳密に言えばこれは正しくないようです。

DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳神経関門を通れるからです。


DHAは必須脂肪酸の1つで、

魚などに含まれ “ 食べると頭が良くなる ” ということで有名になった脂肪酸です。

頭が良くなるかどうかを別にして、

脳に多く含まれる脂肪酸で、

おそらくは機能的というより構造的な役割を果たしていて、

そのために血液脳関門を通ることができるようです。


また、

EPA(エイコサペンタエン酸)のような、

神経細胞の細胞膜に必要な機能的な脂肪酸は、

毛細血管の細胞膜から、

それが接する神経細胞の細胞膜へと、

直接受け渡しされる形で脳に供給されているらしいです。


その理由は、

脳の神経細胞自体は増えることはありませんが、

神経細胞間のシナプスは頻繁に作りかえられているからです。

これをシナプス可塑性(かそせい)といいます。

そのためには大量の脂肪酸を必要としますが、

この脂肪酸は、

このような細胞膜同士の直接的受け渡しで脳に持ち込まれているのです。


話が少しずれましたが、

脳にとってブドウ糖とケトン体は都合のよいエネルギー源です。

どちらも水溶性物質であって、

細胞膜を自由に通ることはできず、

細胞膜を通るにはトランスポーター物質が必要です。

トランスポーターが必要ということは、

脳サイドからいえば “ 制御しやすい ” ということになります。

脳にとってはこの “ 制御しやすい ” という要素が何より必要なのです。


このように考えると、

“ 主にブドウ糖を使っているのは、脳、網膜、赤血球 ”

という理由も見えてきます。

目の網膜は脳から直接伸びて作られる組織であって、

脳そのものと言っていいし、

赤血球にはミトコンドリアがないため、

脂肪酸を使おうにも使えないのです。


(脂肪酸はミトコンドリア内でTCAサイクルで代謝されてATPとなるため、

ミトコンドリアがないと脂肪酸を利用できません)


ちなみに赤血球は、

エネルギー産生を細胞質内の酵素で行っており、

ブドウ糖を嫌気性代謝(=解糖系)することでATPを作っています。

解糖系では、

ブドウ糖1分子から2分子のATPしか作れませんが、

酸素と二酸化酸素の運搬以外の機能を持たない赤血球は、

大量のエネルギーを必要とせず、

低エネルギー系の解糖系で十分なのでしょう。




脳が脂肪酸を使わない理由






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間 黒助





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