2013年12月02日
ブドウ糖の代替エネルギーになるケトン体
間 黒助です。
『 ガン細胞が利用できないケトン体 』
『 エネルギー源としての脂肪 』
『 ブドウ糖が枯渇すると脂肪が燃焼し始める 』
の続きですが、
脂肪酸で作られるアセチルCoAの多くはTCA回路に入りますが、
絶食時などブドウ糖が少ない状況では、
アセチルCoAをTCA回路で処理する際に必要なオキサロ酢酸ができないため、
TCA回路が十分に回りません。
TCA回路の最初のステップは、
アセチルCoAのアセチル基をオキサロ酢酸に渡してクエン酸に変換する反応ですが、
オキサロ酢酸はピルビン酸から作られるので、
解糖系でブドウ糖からピルビン酸が作られなければ、
オキサロ酢酸もできないからです。
※ブドウ糖が不足した状況で脂肪酸の分解(β酸化)が進むと、
ピルビン酸からのオキサロ酢酸の供給が低下するので、
TCA回路が十分に回りません。
そのため肝臓では、
脂肪酸由来のアセチルCoAはケトン体の合成に振り分けられます。
では、
TCA回路で処理できなかった脂肪酸由来のアセチルCoAがどうなるのかと言うと、
肝臓でケトン体の合成に回されることになります。
肝細胞では、
脂肪酸が分解されてできたアセチルCoAの一部が、
アセトアセチルCoAになり、
3‐ヒドロキシ‐3‐メチルグルタリル‐CoA(HMG-CoA)を経て、
アセト酢酸が生成されます。
さらに、
アセト酢酸は脱炭酸によってアセトンに変換され、
また、
還元されて β‐ヒドロキシ酪酸に変換されます。
そして、
アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つが 『 ケトン体 』 と呼ばれているのです。
脂肪酸と違って、
ケトン体は水溶性であるため、
特別な運搬たんぱく質の助けがなくても、
肝臓からその他の(心臓や筋肉や腎臓や脳など)に効率よく運ばれます。
そして、
細胞内でケトン体は再びアセチルCoAに戻され、
TCA回路で代謝されてエネルギー源となります。
但しこの際、
エネルギー産生に使われるのはアセト酢酸のみです。
β‐ヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換されてからエネルギー産生に使用され、
また、
アセトンは濃き~排出されてエネルギー源にはなりません。
なお、
肝臓はケトン体を作り出しますが、
肝臓自身はケトン体をエネルギー源として利用できません。
なぜなら、
肝臓はケトン体を他の臓器・組織のエネルギー源として供給するための工場であり、
作ったケトン体を自分で消費しないよう、
ケトン体をアセチルCoAに変換する酵素が欠損しているためです。
人間が飢餓状態にあるときや絶食中、
あるいはインスリン欠乏による糖尿病などでブドウ糖が利用できない場合には、
ケトン体が重要なエネルギー源となります。
例えば、
脂肪酸は血液脳関門を通過できませんが、
ケトン体は通過できるため、
ブドウ糖が利用できない場合には、
ケトン体が脳の唯一の代替エネルギーとなり得ます。
人間を含め哺乳動物は、
長期間にわたる栄養不足に耐えるための代謝システムを進化させてきました。
人間の主なエネルギー源はブドウ糖ですが、
ブドウ糖が利用できないときには他の方法を考えなければなりません。
そのため、
肝臓で脂肪酸からアセチルCoAがたくさん産生されますが、
アセチルCoAの形のままでは細胞を通過できないので、
体内の臓器にエネルギー源として届けることができません。
このため、
アセチルCoAをいったんケトン体に変換するように進化したのです。
水溶性であるケトン体は全身を巡ることができます。
よってケトン体を代謝する酵素が欠損している肝臓、
およびミトコンドリアが無い赤血球以外の組織では、
再びケトン体をアセチルCoAに変換し、
エネルギー源として利用できるのです。
なお、
ケトン体は一部のアミノ酸からも産生されます。
たんぱく質はアミノ酸に分解されてから代謝されますが、
アミノ酸ごとに代謝経路が異なります。
アミノ酸のうち、
脱アミノを受けたのち、
その炭素骨格部分が脂質代謝経路に由来して、
主に脂肪酸やケトン体合成に利用されるものを 『 ケト原生アミノ酸 』 と呼び、
一方、
TCAサイクルに入って糖新生に利用されるものを 『 糖原性アミノ酸 』 と呼びます。
このように、
アミノ酸は細胞内でたんぱく質合成の材料として使われるだけでなく、
ブドウ糖や脂肪酸が不足してエネルギー源が無くなれば、
ブドウ糖やケトン体に変換され、
エネルギー産生にも利用されるのです。
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間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at 10:13
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