2013年07月16日
細胞の分化を抑制する仕組み
間 黒助です。
細胞の増殖を抑える仕組みは、
『 ガンで欠けている遺伝子 “ ガン抑制遺伝子 ” 』 で書いた、
ガン抑制遺伝子だけではありません。
もう1つ重要な制御システムがあります。
それは “ 細胞が分化する ” 、
つまり、
細胞が神経細胞や筋肉細胞などの特別な機能を持つ細胞に変化する現象です。
細胞の増殖と分化とは密接に関係しています。
多くの細胞では、
増殖している間は分化が抑えられていて、
増殖が止まると分化できるようになります。
そして、
分化があるところまで進むと、
細胞はもう増殖できなくなります。
逆に言えば、
細胞の分化が何らかの原因で進まなくなると、
細胞はいつまでも増え続けることがあるのです。
細胞は分化を促す遺伝子と、
分化を抑える遺伝子を持っています。
細胞の分化を促す遺伝子が働かなくなったり、
逆に分化を抑える遺伝子が異常に活発に働きだすと、
細胞の増殖が止まらなくなってガンが発生すると考えられます。
その1つの例は、
アフリカの子供に多くみられる悪性リンパ腫の一種(バーキット・リンパ腫)です。
これは、
十分に分化していないリンパ球が異常に増殖するガンです。
リンパ腫や白血病などでは、
『 転座 』 と呼ばれる染色体の異常がよく見られます。
転座とは、
ある染色体の一部が別の染色体の一部と置き換わることを言います。
白血病やリンパ腫では、
ガンの遺伝子がしばしば転座によって別の遺伝子に繋がります。
その結果、
細胞はガン遺伝子の働きをコントロールできなくなって、
ガンが生じます。
例えばバーキット・リンパ腫の場合は、
『 ミック(myc) 』 と呼ばれる遺伝子が制御不能の状態に陥ります。
最初はトリ白血病ウイルスに取り込まれていたことから見つかったこの遺伝子は、
細胞の分化を抑え、
増殖を促す働きを持っています。
正常な細胞では、
ミック遺伝子の発現は厳密にコントロールされています。
ところが、
リンパ球に分化するはずの細胞の中で染色体転座が起こり、
問題のミック遺伝子が 『 抗体 』 の遺伝子と融合してしまうことがあります。
抗体は病原体や毒物を見分けるための物質で、
リンパ球内で盛んに生産されています。
つまり、
この種の細胞内の抗体遺伝子は、
常に活発に活動しています。
そのため、
抗体遺伝子に繋がったミック遺伝子は、
本来ならスイッチを切るべきときも働き続け、
細胞分化を止めてしまいます。
その結果、
リンパ球になるべき細胞は、
本来なら分裂を止めて分化し、
抗体を生産すべきなのに、
分化せずに増え続けると考えられます。
転座とは、
ある染色体の一部が他の染色体に移ってしまう現象であり、
それに対し逆位とは、
染色体のある部分の向きが逆になっている現象です。
Posted by ブラックジャックの孫 at 10:43
│人間はなぜガンになるのか