2013年05月12日
T細胞(Tリンパ球)の活性化とその仕組み
間 黒助です。
ガンに対する免疫系の働きで、
主役を務めるのは何と言ってもT細胞(Tリンパ球)です。
上図でも分かるように、
T細胞(Tリンパ球)にも色々ありますが、
中でも直接的にガン細胞を殺す役割を担うのが、
T細胞(Tリンパ球)の一種 『 キラーT細胞 』 です。
ウイルスは、
細胞質や細胞膜を持たず、
遺伝子とそれを守るたんぱく質の殻のみで存在する、
生物と非生物の中間に位置する存在です。
それぞれのウイルスの種類ごとにお気に入りの細胞に入り込んで寄生し、
その細胞のDNAを使って自らのコピーを生産する必要があります。
細胞の中に侵入してしまったウイルスには、
B細胞(Bリンパ球)が放出し血液の中で活躍する抗体は無力な存在になります。
そのため、
そこから先はT細胞(Tリンパ球)の仕事です。
ウイルスが細胞に寄生し、
自らの複製を作って増殖している時、
ウイルスの遺伝子の影響で、
通常の細胞には存在しないたんぱく質が作られます。
寄生された細胞は、
この異常なたんぱく質をアミノ酸の短い鎖(ペプチド)にまで分解し、
『 全身のパトロール役のNK細胞 』 に書いた、
組織適合抗原のクラス I 分子を介して細胞表面に抗原を提示します。
これによって、
T細胞(Tリンパ球)に自らを侵しているウイルスの存在と情報を教えるのです。
遺伝子に異変が起こってしまったガン細胞にも、
これと同じような仕組みで、
その細胞表面に抗原が提示されるわけです。
キラーT細胞は、
その表面に 『 T細胞受容体 』 という、
活性化刺激を受けるための受容体が存在しています。
このT細胞受容体も、
B細胞(Bリンパ球)の表面抗体と同じような仕組みになっていて、
事実上、無限大に近い種類が存在しています。
体内の様々な細胞の表面には、
血液などを通して色々なリンパ球が絶え間なく接触してきます。
ウイルスに寄生されたり、
ガン化が始まったりしていて、
細胞表面に抗原が提示された細胞にも、
そのうちにその抗原とピッタリ結合できる(特異的に結合できる)キラーT細胞が現れます。
すると、
そこで免疫反応が起こり出すわけです。
この状態になると、
キラーT細胞にはその細胞表面にあるT細胞受容体を通して、
“ 活性化しろ ” というシグナルが細胞内部に伝えられます。
ちなみに、
このようなシグナル、あるいは命令のことを、
『 活性化刺激 』 と呼びます。
活性化刺激を受けたキラーT細胞は、
激しく分裂・増殖して、
自分と同じ形のT細胞受容体を持つキラーT細胞の数を急激に増やします。
これによって、
提示された抗原を持つ細胞に特異的な攻撃性を持つ、
兵隊の数を急激に増やすのです。
こうして活性化したプロセスと同時に、
キラーT細胞は結合した細胞を殺しにかかります。
活性化したキラーT細胞は、
通常の血液中にある時の丸い形から、
突起を出した形に変形し、
標的となるガン細胞に接触していきます。
そして、
ガン細胞に特異的に接着すると、
パーフォリンと呼ばれるたんぱく質を打ち込んで細胞に穴を開け、
そこにグランザイムと呼ばれるたんぱく質分解酵素を流し込み、
標的の細胞核のDNAに攻撃を仕掛けます。
また、
細胞表面にあるアポトーシスを誘導するFas分子のスイッチをONにすることで、
その標的細胞を自殺させます。
この辺りの仕組みは、
『 最後は心の強さが命を左右する 』
でも書いたとおりです。
そして、
このように標的とした細胞の破壊が終わると、
キラーT細胞はまた次の標的細胞を探し始めるのです。
キラーT細胞を主役とするこのような細胞障害性の免疫のことを、
『 細胞性免疫 』 と言います。
B細胞を主体とした免疫反応を 『 液性免疫 』 と呼ぶが、
特にガンに対して免疫系が効果的に働くには、
この2つの免疫の働きを、
“ 細胞性免疫が液性免疫より優位に立つ ” 状態に誘導することが重要になってきます。
キラーT細胞の働きを助けるのが 『 ヘルパーT細胞 』 です。
ヘルパーT細胞は、
その働きによって1型ヘルパーT細胞(Th1)と、
2型ヘルパーT細胞(Th2)に分けられます。
このうちの1型ヘルパーT細胞(Th1)は、
キラーT細胞の活性を助けて、
細胞性免疫の力を増強します。
では、
もう1つの2型ヘルパーT細胞(Th2)はどうかと言うと、
こちらはB細胞(Bリンパ球)の活性を助けて、
抗体の生産を促し、
免疫の方向性を液性免疫の方に傾けるのです。
この作用は、
キラーT細胞を主体とする細胞性免疫には “ 抑制的 ” に働きます。
そのため、
ガン細胞への攻撃性を弱める結果となってしまいます。
つまり、
ガンへの免疫系の働きの主役を務めるキラーT細胞の働きを高めるためには、
細胞性免疫と液性免疫のバランスを細胞性免疫の方に傾けなければならない、
ということです。
そのためには、
1型ヘルパーT細胞(Th1)がどんな方法でキラーT細胞を助けているか、
その作用に注目する必要があります。
1番重要なのは、
1型ヘルパーT細胞(Th1)が、
インターロイキン2というシグナル伝達物質を生産することです。
このインターロイキン2は、
NK細胞などを活性化させるほか、
キラーT細胞も活性化させるサイトカイン(調整因子/シグナル伝達物質)です。
また、
1型ヘルパーT細胞(Th1)は、
インターフェロン-γ (ガンマ)というシグナル伝達物質も生産します。
このインターフェロン-γ (ガンマ)は、
抗原提示細胞であるマクロファージや樹状細胞の活性化を促すサイトカインです。
そして、
1型ヘルパーT細胞(Th1)の生産するインターフェロン-γ (ガンマ)によって、
活性化されたマクロファージや樹状細胞は、
インターロイキン12を生産します。
このインターロイキン12というシグナル伝達物質は、
複雑な経路を経て 『 CD4分子 』 という分子を持つ未熟なヘルパーT細胞を、
細胞性免疫を活性化させる1型ヘルパーT細胞(Th1)に分化させるのです。
つまり、
キラーT細胞の活性を助ける1型ヘルパーT細胞(Th1)の数を増やすことで、
フィードバック的にキラーT細胞を活性化するのです。
このインターロイキン12は、
同じようにNK細胞なども活性化させます。
活性化されたNK細胞もまた、
インターフェロン-γ (ガンマ)を生産し、
またまた1型ヘルパーT細胞(Th1)の数が増えます。
このように、
1度、細胞性免疫の方に免疫機能の方向性が傾くと、
連続して活性化の反応が繋がっていくのです。
これに対し、
液性免疫の手助けをする2型ヘルパーT細胞(Th2)は、
インターロイキン4やインターロイキン10といったシグナル伝達物質を生産します。
これらのサイトカインは、
同じ 『 インターロイキン 』 という名前は付いていますが、
逆にキラーT細胞の働きを抑えてしまいます(B細胞<Bリンパ球>の働きは活性化します)。
こうしたヘルパーT細胞の働きを鏡みると、
ガンに対して有効な細胞性免疫を強めるためには、
『 1型ヘルパーT細胞(Th1)の活性を促し、
2型ヘルパーT細胞は逆にその活性を抑えることが望ましい』
ということが導き出されるのです。
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間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at 19:03
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