2013年05月06日
ガンに対して重要な細胞は何か
間 黒助です。
血液中を循環する細胞で、
人体の免疫機能に深く関与しているのが白血球です。
とはいえ、
ひと口に 『 白血球 』 と言っても実に様々な種類があります。
上図は簡単な図ですが、
ご覧の通りに多様です。
専門的にはさらに細かく複雑に分類できるのですが、
一般向けに示すならこの程度の分類が限界でしょう。
このレベルの知識であっても、
相当に免疫に関して詳しくなれると思います。
これら免疫機能に関わる細胞や、
血液に関係する細胞は、
骨の内部にある骨髄で絶え間なく生産されています。
骨髄はまるで 『 免疫細胞の生産工場 』 です。
また、
これらの細胞は全て、
『 造血幹細胞 』 と呼ばれる未分化の※前駆細胞から生まれてきます。
(※特定の種類の細胞に分化する前段階の細胞)
この造血幹細胞が分化し、
赤血球になったり、
リンパ球になったりするわけです。
ちなみに、
現在では分化する前の細胞に異なった刺激を与え、
人工的に思い通りの細胞に分化させることが一部で可能になっています。
一般には再生医療の世界で注目されている技術ですが、
実はこうした技術は、
免疫系の先端治療では、
すでに日常的に使用されています。
いずれにしても、
これらの免疫細胞が相互に協力し、
外敵やガン細胞などに対応して人体の恒常性(ホメオスタシス)を保ちます。
これを 『 生体防御反応 』 と呼びます。
そして、
こうした様々な白血球の中でも、
特にガンに対して重要な役割を担っているのが、
『 リンパ球 』 と 『 単球(単核食細胞) 』 の仲間です。
その役割については数日に分けて詳しく書いていこうと思いますが、
その前に、
免疫系の細胞がどのように異物を見分けているかについて説明しておきます。
なぜなら、
免疫細胞が異物を見分ける方法についての知識があると、
各種の免疫細胞についての説明も、
より深く理解できるようになるからです。
免疫系は敵をどう見分けるかですが、
免疫系は、
体内に自分の成分ではない異物が入ってくると、
その異物に対してすぐさま行動を起こし、反応します。
自分の構成要素である 『 自己 』 と、
そうでない 『 非自己 』 を正確に見分け、
非自己、つまりは異物を排除しようと迅速に行動に出るのです。
このとき、
免疫系はどうやって自分の細胞や組織と、
体外から侵入してきた異物とを見分けているのでしょうか。
これは、
自分の細胞には特有の “ 旗 ” のようなものが立っていて、
「同じ旗が立っているものには攻撃を仕掛けない」
というルールができていると考えれば、
比較的理解しやすいと思います。
この旗の役目を担っているのが、
『 組織適合抗原 』 と呼ばれる分子で、
ほとんどの細胞の表面に存在しています。
この分子(旗)は人それぞれで異なるため、
例えば他人の臓器を移植したときなどにも強烈な拒絶反応が起こります。
臓器を構成するあらゆる細胞の表面には、
自分とは異なる組織適合抗原(旗)が存在します。
そのため、
移植された臓器を免疫系が異物と認識し、
攻撃を仕掛けてしまうのです。
臓器移植を行おうとする場合、
こうした拒絶反応が起こるのを避けるため、
極力同じタイプの組織適合抗原(旗)を持っているドナーから移植を行います。
そして、
人間の場合は白血球の型(HLA抗原)で、
この “ 旗 ” の違いを表しています。
例えば、
白血病などの治療では骨髄移植が行われることがありますが、
その場合にも、
このHLA抗原が極力一致する相手を、
骨髄バンクや臍帯血(さいたいけつ)バンクを通して探します。
これは、
移植した骨髄で生産される新しい免疫細胞が、
患者さん自身の体を異物として認識し、
攻撃してしまわないようにするためです。
骨髄移植では、
このように白血球の型が一致するかどうかが優先されるので、
移植後に血液型、
つまり赤血球の型が変わってしまうこともよくあるといいます。
ちなみに、
臓器移植は非常に難しいのに、
血液型さえ合致すれば他人に対しても輸血が可能なのは、
赤血球の表面には拒絶反応をもたらす組織適合抗原が存在しないからです。
ただ、
血液を輸血すると、
赤血球と一緒に白血球も輸血されるはずですが、
それはどうなるかと言うと、
相手方の絶対多数の免疫細胞に瞬く間に襲われてしまうので、
問題が起きないのです。
余談になりますが、
HLA抗原は兄弟姉妹などでは一致する確率が高く、
一卵性双生児の場合はその性質上、完全に一致します。
そのため、
アメリカなどでは白血病にかかった子供を救うために、
両親がさらに子供を作る、
それも遺伝子操作であらかじめHLA抗原が一致する受精卵だけを選別して産む、
といったケースが実際に多数存在して物議をかもしているそうです。
また、
免疫細胞療法の中には、
他人のリンパ球を投与する手法もあります。
これは、
他人のリンパ球が体内に入ると、
リンパ球も白血球の一種なので、
強烈な拒絶反応、つまりは免疫応答が起き、
それが切っ掛けで免疫系が活性化しガン細胞を殺す、
という考え方に立った治療法です。
ただし、
現在ではこの治療法は危険だと考えられていて、
特殊なケース以外ではほとんど行われていません。
投与される他人のリンパ球自体はそれほど危険視されていないのですが(量にもよる)、
そこに混入しかねないウイルス等による感染症のリスクが大きい、
というのがその理由です。
また、
それほど顕著な治療効果が見られなかった、
という理由も当然あるでしょう。
現在、
国内の自由診療機関で行われている各種の免疫系の治療法は、
様々な試行錯誤の段階を経て、
格段に安全性が高いものになっています。
Posted by ブラックジャックの孫 at 21:40
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