間 黒助です。
“発ガン物質”と聞くと、
その物質が体に入ったり皮膚に触れたりしただけで、
正常な細胞がガン細胞に変わるような印象があると思います。
しかし実際にはそんなことはありません。
発ガン物質とは、
細胞内のDNAを傷つけて遺伝子を変化させる物質のことです。
細胞内で遺伝子が変異を繰り返すと、
正常な細胞がガン細胞に変わることがあります。
細胞のガン化についてのこれまでの研究では、
発ガン物質とされる物質を食べたり触れたりしても、
それによって正常細胞がガン細胞に変わることはほとんどないことが分かっています。
ガン細胞が生まれるまでには、
細胞が遺伝子のレベルでいくつもの変異を重ねる必要があるのです。
また、
どんな物質が遺伝子の変化のどの段階で、
どんな仕組みで細胞をガン化させるかも、
ほとんど分かっていません。
それでも、
ある種の物質が発ガン性があると言えるのは、
多くの動物実験の結果や、
特定の職業とガン発症の関係、
生活習慣や食習慣とガンの関係などを示す長年のデータから、
統計的にそのような結論が引き出されているからです。
発ガンとの関係が最もよく知られているのがタバコの煙です。
タバコの煙には約5,300種類もの化学物質が含まれていて、
そのうち、
ホルムアルデヒドなど70種類以上が発ガン物質とされていて、
他にも多くの物質の発ガン性が疑われています。
喫煙者のガンのリスク、
ガンを発症する確率は、
非喫煙者の1.5倍で、
これは1シーベルトの放射能を1度に浴びたときと同じくらい、
ガンのリスクが高まることを意味します。
ちなみに、
1シーベルト=1,000ミリシーベルト=100万マイクロシーベルト。
安全基準は、
原発で働く放射線業務従事者で、
5年間で100ミリシーベルト(年平均20ミリシーベルトに相当)、
かつ1年間の最大50ミリシーベルトとされています。
日本で1990年代、
人体に悪影響を及ぼすとして有名になったのが、
廃棄物の焼却などの際に大気中に放出されるダイオキシン類です。
ダイオキシンは以前から非常に強い毒性と、
胎児の催奇性(胎児を奇形させる性質)を持つことが知られていて、
WHO(世界保健機構)も一部を発ガン物質のリストに加えました。
しかし最近の研究では、
ダイオキシンは直接遺伝子を傷付けるのではなくて、
他の発ガン物質が遺伝子を傷付ける作業を強めていると見られています。
じゃあ人間の生活環境に存在する物質で、
“最強の発ガン物質”は何なのでしょうか。
これまでに知られているのは、
ピーナッツなどのナッツ類に発生するカビが放出する毒素、
『アフラトキシン』です。
1960年に、
イギリスで10万羽以上の七面鳥が中毒死し、
その物質として発見されたのが、
ブラジル産のピーナッツミールに含まれていた『アフラトキシン』でした。
この物質は、
生物の体内でDNAが複製されるときにDNAを損傷させ、
ガンを発症させると見られています。
毒物とされる物質は、
通常、何日も続けて摂取しても危険がないとされる上限が定められています。
しかしアフラトキシンに限っては、
日本の食品安全委員会は出来る限り低くするべきとしていて、
上限を設定していません。
これは、
アフラトキシンが少しでも検出された食品は、
流通させてはならないということです。
実際にネズミを使った実験では、
餌にアフラトキシンをごく低濃度(1gあたり10億分の15g)混ぜただけで、
全てのネズミが肝臓ガンを発症したということです。
発ガン物質は自然界にもたくさん存在します。
WHOの国際がん研究機関によると、
人工物や自然界の物質も含め、
人間に対して明らかな発ガン性を示す物質は100種類以上、
疑わしい物質は330種類にのぼります。
ただしこれらの物質の発ガン性は同じではなく、
発ガン性の最も強いものと最も弱いものでは100万倍もの差があります。
発ガン性物質は体内でも作られます。
中でも1番発ガン性が強く疑われているものに、
『活性酸素』があります。
人間の体内では、
新しい細胞を作ったり、
エネルギーを生み出したりするなどの生命活動を行うため、
無数の化学反応が起こっています。
この反応をスムーズに起こすために重要な働きをしているのが酸素です。
しかし酸素と他の物質との化学反応が起こる際に、
活性酸素という他の物質と異常に反応しやすい、
不安定な物質が作り出されることがあります。
これが細胞中のDNAを傷つけるとガンが発生する可能性があります、
最も人間の体は、
こうした活性酸素を取り除く、
特殊なSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)酵素を作り出し、
活性酸素が遺伝子を傷付けるのを防いでいます。
しかし臓器によってはこのSODが少ないこともあり、
そのような臓器では、
活性酸素によって細胞がガン化しやすいと考えられています。
食物や、
体内で食物が分解されてできた物質がガンを引き起こす可能性もあります。
人間の全てのガンの35%は食事によって発生すると言われてるくらいです。
多くの食物には、
ごく弱い発ガン性を持つ様々な物質がわずかながら含まれています。
食物からこれらを取り除くことは現実的に不可能ですが、
食生活への少しの気配りによって、
食物中の発ガン物質の影響を抑えることができます。
その1つは、
体内で消化吸収されない発ガン物質を、
速やかに体外に出すために“排泄を早める”ことです。
便秘と大腸がんの関係は統計的に示されています。
便秘解消には食物繊維の多い食事を摂って、
と俗に言いますが、
1番の便秘解消はお肉を食べるのが効果的です。
食物繊維は食べ過ぎると逆に便秘を促進させます。
水分をよく摂ってお肉を食べ、
消化器官の働きを活発にすれば、
排泄が早まり、
発ガン物質が体と接触している時間を短くすることができます。
食塩そのものには発ガン性はないのですが、
取りすぎると発ガン物質の手助けをするクセモノとなるので要注意です。