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2014年03月12日
ガンは細胞分裂のコピーミス
間 黒助です。
ガンとは多細胞生物に特有の病気です。
単細胞生物では起こりえません。
どういうことかと言いますと、
多細胞生物の体を作り上げているたくさんの細胞は常に入れ替わっています。
1つの細胞が寿命を迎えたり、
傷ついたりして死ぬと、
細胞分裂によって新しい細胞が生まれ、その穴を埋めていきます。
ヒトの場合、毎日3000億個もの細胞が入れ替わっています。
体にとって肝心なことは、
細胞の総数をおよそ一定に保つことです。
細胞が減り過ぎると各組織の機能が低下します。
逆に細胞が増えすぎても体は困ります。
スペースが限られているからです。
そのため、
細胞の数は一定の数を保つようにコントロールされているのです。
実際に数をコントロールしているのは細胞の中にあるいくつかの遺伝子です。
細胞を分裂・増殖させようとする役割を持つ遺伝子(アクセル役)と、
増えすぎるのを抑制する役割を持つ遺伝子(ブレーキ役)があります。
ところがこれらの遺伝子のいくつかに異常が起きると、
細胞はひたすら分裂を続けるようになります。
いってみればアクセルを踏み込んだまま、
またはブレーキが利かない状態で走る車のようなものです。
こうして生まれた細胞の集団が成長し、
やがて腫瘍(悪性新生物)という目でも見えるような膨らみになります。
その中で分裂のスピードが早く、
他の臓器にまで転移して、
再び増殖を始める悪性の腫瘍細胞を “ ガン ” と呼びます。
一方、
増殖のスピードが遅くて転移もせず、
生命を脅かす危険がないものは “ 良性腫瘍 ” と呼ばれます。
では、
細胞の数をコントロールしている遺伝子の異常は、
どのように起きるのでしょうか。
遺伝子とは、
いわば生命の設計図であり、
その実体はDNAという物質です。
DNAは塩基やリン酸などによって構成されていて、
塩基の配列の仕方で、
様々なたんぱく質を作り出しています。
このたんぱく質が体に必要な多くの働きをしているのです。
このDNAが傷ついたり塩基の配列が乱れると、
遺伝子としての正常な働きを失います。
細胞はコントロールが利かなくなり、
むやみやたらと分裂を繰り返し増殖を始めるのです。
DNAを傷つける原因には、
放射線や化学物質、太陽光に含まれる紫外線、
細胞内で作られる活性酸素、ある種のウイルスが挙げられます。
しかし原因は他にもあります。
もっと根本的な問題です。
細胞が分裂する際、DNAはコピーされ、
新しい細胞に同じ遺伝情報が伝えられていきます。
しかし困ったことに、
毎日行われている細胞の入れ替わり、
つまり通常の細胞分裂の際にも、
DNAの配列が間違ってコピーされる(コピーミス)ことがあるのです。
いわば細胞分裂のたびにガンが発生するリスクがあるわけです。
ある報告では、
コピーミスを起こした細胞は1日40個にも及ぶといいます。
日々、ガンの卵のような細胞が体内で生まれているわけです。
統計的には20歳代の間にガンのもとになる細胞が1つや2つ、
体内にできているとも考えられています。
多くの場合、
こうした細胞は体に備わっている防御システムのおかげで、
増え続ける前に排除されます。
しかし中にはそうした防御システムをかいくぐり、
分裂を繰り返すものがあります。
最初はたった1つでも、
分裂を重ねるごとに、
さらに制御の利かない細胞に変化していき、
やがてガンに成長していく可能性があるのです。
いずれにしても、
こうした “ コピーミス ” は、
その個体が生きている間に、
何度も細胞分裂を繰り返すというメカニズムを持った、
多細胞生物ならではの問題です。
単細胞生物は分裂の際に異常が起きても、
それは違う性質を持った個体が新たに生まれるだけであって、
個体を蝕む病にはなり得ません。
ガンとは、
生物が単細胞生物から多細胞生物に進化するにあたって背負うことになった、
『 宿命の病 』 とは言えないでしょうか。
【ガンの増殖過程】
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そんな少しのことで今後が、未来が変わるかもしれません。
僕がご相談やご質問に対してどう返答しても決めるのは自分です。
そのためには少しでも情報を集め、
後悔しない選択をして下さい。
少しでもお役に立てればと思っております。
間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
12:30
│人間はなぜガンになるのか
2014年03月10日
がんはいつからあるのか
間 黒助です。
かつて日本では国民病といえば結核を指しました。
今の日本人にとって国民病とはまぎれもなくガンです。
何しろ2人に1人はガンにかかり、
3人に1人はガンで亡くなる時代です。
家族や親戚、友人をガンで失った経験をしていない人は、
おそらくいないのではないでしょうか。
世界を見渡しても、
ガンの猛威は他の病気から突出しています。
2007年の推計では、
毎年世界で700万人以上がガンで亡くなっているといいます。
かつては工業化の進んだ先進国特有の病と見られてきましたが、
最近は開発途上国での増加も著しく、
それらの国々でのガン死亡者数は世界全体の70%に及ぶとされています。
今やガンは人類最大の病と言ってもいいでしょう。
一体、いつ頃から僕達人類を苦しめてきたのでしょうか。
2012年の1月末、
古代エジプトのミイラから、
かなりハッキリとしたガンの痕跡が見つかったというニュースがありました。
ミイラの主は、
2300年前にエジプトで暮らしていた男性で、
ポルトガルの国立考古学博物館に長く収蔵され、
『 M1 』 と呼ばれてきました。
このミイラをエジプトとポルトガルの研究チームが2年にわたり、
詳しく調べたのです。
どんな病気を患っていたのか、
何が原因で命を落としたのか、
その秘密を探ろうというのです。
しかし貴重なミイラを解体して調べるわけにはもちろんいきません。
研究チームが利用したのは医療用の最新機器でした。
ガンをはじめ、
様々な病気に使われているCT(コンピュータ断層撮影装置)です。
研究チームは、
M1 を慎重に博物館から運び出し、
CTで体の内側の様子を詳しく観察したのです。
9万枚に及ぶ画像を撮影した研究チームは、
M1 の骨盤や腸骨、腰椎、胸椎、上腕骨などに点在する白い斑点に注目しました。
何らかの病変を示す可能性があったからです。
外傷によるものなのか、
伝染性の病気によるものなのか、
慎重に検証が行われました。
そして白い斑点が見つかった場所の特徴や大きさから、
前立腺にできたガン(前立腺ガン)が骨に転移した跡だと判断したのです。
2011年の末、
研究者達は論文を発表し、
その成果が世界中で認められました。
それは、
ガンは新しい病気だというのが一般的な考えですが、
実はヒトが地球上に現れて以来、ガンは存在していたということです。
このミイラから見つかったガンは、まさにそのことを指し示しています。
M1 と呼ばれるこの男性は、当時としては高齢なほうでした。
死因はおそらく前立腺ガンで、
亡くなる前は、
前立腺から転移したガンが腰の骨や骨盤にまで広がり、
激しい痛みを感じていたことでしょう。
前立腺ガンに特有の排尿障害もあったはずです。
痩せて衰弱して死に至ったのだと思います。
ガンは、
M1 がいた古代エジプトの時代には、
人々を苦しめる病としてすでに存在していました。
古代ギリシャ人で、
医学の父と呼ばれるヒポクラテス(紀元前460年頃~紀元前370年頃)がいますが、
のちにまとめられた全集には、
乳ガンや子宮ガンなどについての記載があります。
当時のギリシャでも、
ガンは病気として認識されていたのです。
インドでも数千年の歴史を持つとされるアーユルヴェーダ(伝統医学)の中で、
ガンが認識され、
その治療法についても述べられているといいます。
人類にとってガンは、
決して最近のものではなく、
紀元前の昔から付き合わざるを得なかった古い病なのです。
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間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:33
│人間はなぜガンになるのか
2013年08月07日
突然変異を加速させる遺伝子異常
間 黒助です。
『 ガン細胞の遺伝子は変異しやすい 』 の続きですが、
こうした仕組みが何らかの理由で十分に働かず、
DNAが修復されないうちに、
その複製が始まったらどうなるでしょうか。
遺伝子の変異はそのまま定着し、
分裂して新しく生まれる細胞に引き継がれることになります。
高い発ガン性を示す遺伝病が数多く知られていますが、
その原因となる遺伝子の大部分が、
DNAの複製や修復に関与する分子を作ることが明らかにされています。
遺伝子に異常を持つこのような細胞では、
突然変異が加速されて起こり、
“ ガンらしい性質 ” が容易に獲得されてしまうものと考えられます。
また、
ガンがしばしば薬剤耐性を獲得することも、
ガン細胞の持つゲノムの不安定性を反映しているものと思われます。
『 ガンは多細胞生物の宿命的病気 』 に書いた、
“ ガンの進化論 ” に立ち返るなら、
正常な細胞から、
利己的細胞への進化を加速してしまうような遺伝子変異が存在するということになります。
こうした変異の効果を抑制する方法が見つかれば、
ガンの予防や治療にとって強力な助っ人になるかもしれません。
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Posted by ブラックジャックの孫 at
08:34
│人間はなぜガンになるのか
2013年08月04日
ガン細胞の遺伝子は変異しやすい
間 黒助です。
様々な遺伝子の変異がガンを特徴づけています。
これらの変異は一遍に起こるわけではなく、
徐々に積み重なっていきます。
長い間放置された良性腫瘍からガンが発生することがあるのも、
それを象徴しています。
ところで、
ガン化への歩みを少しずつ後押しするこれらの変異のうち、
ガン遺伝子の活性化は1段階の変異で起こり得ます。
しかし、
ガン抑制遺伝子の働きが完全に失われるには2段階の変異が必要です。
これは細胞が全ての遺伝子を2セットずつ持っているためです。
例外は精子と卵子で1つしか含んでいません。
このようなことを考え合わせると、
ガン細胞で起こっている遺伝子の変異の数は、
合わせて10個前後に達する可能性があります。
そうすると、
「これらの変異は、それぞれが偶然の産物なのか?」
という疑問が湧いてきます。
本当は偶然ではなく、
1つ1つの突然変異が互いに何らかの関係を持つのではないでしょうか。
例えばある種のガンでは、
DNAの複製ミスが異常に多く見られます。
またガン細胞では、
しばしば染色体の形や数に異常が生じることも、
昔からよく知られています。
染色体の数は正常な細胞では46本なのに、
ガン細胞では80本ほども見られることがあるのです。
実は正常な細胞でも、
DNAはたえず損傷を受けたり複製ミスを起こしたりしています。
それにもかかわらず、
正常な細胞の遺伝子情報が容易に変化しないのは、
細胞には傷や複製ミスを自ら修復する仕組みが備わっているからです。
『 ガン細胞はアポトーシスを無視する 』 のP53は、
この仕組みを監督する重要な分子の1つです。
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Posted by ブラックジャックの孫 at
09:35
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月30日
新たに注目される代謝遺伝子
間 黒助です。
2009年、
ガン研究に1つの転機が訪れました。
その背景には、
網羅的なゲノム解析や、
代謝物を解析する技術の発展があります。
ゲノム解析技術が未熟だった頃には、
ガンの原因となる遺伝子の変異について研究する場合、
多くの研究者は、
すでに見つかっているガン遺伝子やガン抑制遺伝子、
及びそれらに近縁の遺伝子群にのみ焦点を当てていました。
全ての遺伝子を調べる余裕がなかったからです。
しかし解析技術やコンピューターの能力が進歩してくると、
とにかく全てを調べてみるという、
『 アンバイアスト・アプローチ(偏りのない探究法) 』 が可能になりました。
その結果、
脳腫瘍の細胞では、
代謝に関わるある遺伝子が変異していることが分かりました。
この遺伝子は 『 IDH 』 と呼ばれ、
糖を分解した物質からアミノ酸を生産するときに活動します。
それまでガンのゲノム科学的研究においては、
基本的な代謝はあまり注目されていませんでした。
『 IDH 』 の変異によって、
細胞内には代謝によって生産されるある分子(2‐HG)が、
正常な細胞の100倍近くも蓄積することが明らかになりました。
この分子は、
細胞をガンのように振る舞わせる活性を持つと報告されています。
そこで、
このような物質を 『 造腫瘍性代謝物(オンコメタボライト) 』 と呼ぼうと提唱されています。
『 発酵によってエネルギーを作るガン細胞 』 で書いた、
ワールブルクの発見に端を発する古くて新しい研究分野、
すなわちガン特有の代謝の仕組みの研究は、
現在急速に展開されつつあります。
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Posted by ブラックジャックの孫 at
11:34
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月29日
発酵によってエネルギーを作るガン細胞
間 黒助です。
1956年、
著名なドイツの生化学者オットー・ワールブルクは、
アメリカの科学雑誌 『 サイエンス 』 に、
「ガン細胞の起源について」という題の講演記録を発表しました。
その中でワールブルクは、
「ガン細胞では呼吸を行う構造が壊れており、
代わりに発酵によって※ATPが生産されている」
という自身の発見の重要性を論じました。
※ATP(アデノシン三リン酸)は、
生体内でエネルギーを保存する物質であり、
細菌から人間まで多様な地球上の生物が共通して利用しています。
ATPは合成されるときにエネルギーを吸収し、
分解されるときにエネルギーを放出します。
ワールブルクは細胞の呼吸研究の権威であり、
1931年には呼吸の研究でノーベル生理学医学賞を受賞しています。
正常な細胞は、
酸素が十分にある環境で分裂するとき、
そのエネルギーの大部分が 『 呼吸 』 によって作り出されます。
呼吸は酸素を用いる一連の生化学反応であり、
次のように進んでいきます。
①細胞の外部からブドウ糖(グルコース)を取り込み、
それを2つに割ってピルビン酸という原料分子に変える。
②原料をATPの大量生産工場であるミトコンドリアに運び入れる。
③ピルビン酸を少しずつ分解していき、
それによって解放されるエネルギーを使ってATPを作る。
④原料は最終的に水と二酸化炭素に分解され、
1個のブドウ糖から合計36個のATPが作り出される。
一方、
例えば急激な運動をした後の筋肉のように、
酸素が細胞に不足している場合にはエネルギーは別の過程で蓄えられます。
この時ブドウ糖はピルビン酸には分解されますが、
ミトコンドリアに運ばれることはありません。
ピルビン酸は乳酸に変えられ、
その多くが細胞外に排出されるのです。
これは 『 発酵(解糖) 』 と呼ばれる過程であり、
ブドウ糖1個から生み出されるATPはわずか2個だけです。
ワールブルクは、
ガン細胞は酸素の十分ある条件下でも、
効率の悪い発酵に頼ってエネルギーを得る、
という奇異な現象に注目しました。
ワールブルクは、
今日では 『 ワールブルク効果 』 と呼ばれるこの現象こそがガンの原因であり、
ガン治療に選択肢をもたらすもの、
すなわち、
ガン細胞のみの攻撃を可能にするものであると論じました。
ワールブルクはまた、
肝臓が再生するときのように、
正常な組織が急速に分裂するときには、
依然として呼吸が優勢であるのに対し、
未分化な肝細胞では発酵の比率が大きいことも指摘しました。
そして、
発酵が呼吸より優勢になるのは、
細胞の分裂が速いためというより、
細胞が十分に分化していない、
すなわち、
未分化であるためと考えました。
ワールブルクは、
この講演の最後に、
「ガンの本質はここにある。
昨今、盛んな “ 変異 ” “ 発ガン物質 ” “ ガンウイルス ” などの研究は、
本質を見誤らせるものであり、
ガン治療の発展を遅らせるという意味で有害でさえある」
と断じました。
ワールブルクのこの排他的な主張が正しくなかったことは、
その後のガン研究の流れを見れば明らかです。
しかし、
ワールブルクの発見した現象自体は、
それ以後ガンを研究する人々の脳裏に深く刻まれることになりました。
ガン研究者達は何か新たな発見や概念がもたらされるたびに、
「これでワールブルク効果を説明できるだろうか」
と自問することが通例となったのです。
今では、
ガン化に関わる多くのシグナル伝達経路は、
細胞内で解糖(発酵)を促進し、
呼吸を抑制する作用を持つことが分かってきています。
またワールブルクは、
呼吸の低下を “ 欠陥 ” とのみ捉えていましたが、
いくつかの観点から、
むしろ “ 優位性 ” と見ることもできるという説も出されています。
例えば、
呼吸によってATPを生産するには時間がかかりますが、
解糖はすばやく起こります。
そのため、
材料さえ十分にあれば、
解糖はエネルギーを手っ取り早く出すには良い方法と言えます。
事実、
一部のガン遺伝子は、
細胞へのブドウ糖の取り込みを増大させる作用を持つことが知られています。
また、
多くのガン組織では、
細胞がギッシリと詰まっているために、
血管による酸素供給が滞り、酸欠状態に陥りがちです。
酸素消費量の少なくて済む解糖は、
そのようなガン特有の微小環境に適応した優れたエネルギー取得法と見ることもできます。
さらに、
糖を二酸化炭素と水にまで徹底的に分解しつくしてしまう呼吸と違って、
解糖で生ずる乳酸は、
生体で必要になる別の分子(例えばアミノ酸)を作り出すための良い材料にもなります。
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:36
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月22日
代謝やエネルギー産生を調節する遺伝子
間 黒助です。
DNAは、
生物やそれを作る細胞にとっては “ 設計図 ” にあたります。
建物や器物の設計図は、
それらの製作・維持に不可欠ですが、
実際にそれを作ったりメンテナンスするにあたっては、
工場や材料、それにエネルギーも必要になります。
僕達人間は、
食物に含まれる炭水化物、脂肪、たんぱく質などから、
生命活動に必要な材料(有機分子)とエネルギーの両方を得ています。
そして細胞の内部には、
生命活動を支えるための様々な化学反応を分業化して行う小器官が含まれています。
これは、
1つの社会が様々な工場や施設を擁し、
資源やエネルギー、
それに製品などを流通させて活動している様子とよく似ています。
人間社会の場合、
例えばエネルギーは、
決まった場所(発電所やガス会社)で作り出し、
社会全体に供給しています。
それと同様、
細胞内では “ ミトコンドリア ” と呼ばれる小器官が高エネルギー分子(※ATPなど)を作り、
細胞内全体に供給しています。
ミトコンドリアはいわばエネルギーの供給会社です。
※ATP(アデノシン三リン酸)は、
生体内でエネルギーを保存する物質であり、
細菌から人間まで多様な地球上の生物が共通して利用しています。
ATPは合成されるときにエネルギーを吸収し、分解されるときにエネルギーを放出します。
ATPには、
化学結合という形で高いエネルギーが充填されています。
そこでATPをたくさん作っておけば、
ちょうど蓄電池や液化ガスボンベのように、
必要なときに必要な場所に運んで使うことができます。
ATPが結合を切ったり、
別の結合を作ることによってエネルギーが発生し、
化学反応や分子などの運動、
それに温度変化などが引き起こされます。
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2013年07月21日
ガンの転移を助ける遺伝子と抑える遺伝子
間 黒助です。
ガン細胞の最も厄介な性質は、
細胞が体内の1ヶ所に留まらず転移することです。
良性の腫瘍は普通、
固形分子の膜につつまれています。
しかしガン細胞はこの膜をすり抜けて周囲に広がったり(浸潤)、
血管やリンパ節に入って移動し、
体の別の場所に巣食ったりします。
これがガンの転移です。
正常な細胞は、
周囲の細胞や環境を尊重し、
それらとの関係を良好に保ちながら組織の秩序を維持しています。
このとき大きな役割を果たすのが、
『 細胞の増殖を抑える遺伝子 』 で書いた、
細胞同士を接着する装置や、
『 細胞を増殖させる遺伝子 』 で書いた、
細胞の生産する固形物(細胞外マトリックス)を感知する “ 専用アンテナ ” です。
そのため、
これらの物質に異常が起こると、
細胞は本来、留まるべき場所を認識できず、
組織から剥げ落ちて、
フラフラと外にさまよい出てしまいます。
細胞が組織から抜け出す過程を助けるのが、
腫瘍を包む膜(基底膜)を分解する酵素(MMPなど)です。
ひとたび酵素によってガンを包む膜が破られれば、
ガン細胞がその場所から移動するのは容易です。
ある種のガン遺伝子は、
このような酵素の遺伝子にスイッチを入れる作用を持つことが知られています。
人間のガンで最も数が多いのは、
上皮細胞由来のガン(カルチノーマ=癌腫)です。
上皮細胞の特徴は、
細胞が並んでシート状の構造を作り、
それが袋や管の形をとって臓器を作り出すことです。
この単層シートの中では本来、
個々の上皮細胞は隣りの細胞と強固に結び付けられており、
自由に動き回ることはできません。
※正常な上皮細胞や内皮細胞の個々の細胞は接着因子によって結合しています。
ガン細胞ではこの結合が壊されて自由に動き回れるようになります。
しかし、
上皮細胞から生み出されたガン細胞は、
シートから自由に抜け出して動きまわることができます。
ガン細胞のこの性質が浸潤や転移に結び付くと考えられます。
組織から抜け出すという性質は、
本来は上皮組織よりむしろ、
間葉組織(臓器と臓器の間を埋めている組織)の細胞に観られます。
そこで、
上皮細胞がガン化したときに示すこの変化は、
『 上皮‐間葉転換(EMT) 』 と呼ばれています。
※ガンの多くは上皮細胞がガン化したものですが、
この細胞は本来固定されていて動きまわることはできません。
しかしガン化すると間葉細胞の性質に変化し周囲の組織に浸潤・転移します。
この性質はガンに特有ではなく、胎児では正常な上皮細胞でも見られます。
EMTは、
体を作りかけている胎児においては正常な上皮細胞でも見られます。
ガン細胞と未分化細胞(幹細胞)は様々な点で似ていますが、
これもその一例と言えます。
※ガンについてや、
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2013年07月19日
細胞の分裂回数計をゼロにする遺伝子
間 黒助です。
ほとんどの細胞は、
永久に分裂し続けることはできません。
例外は、
組織の再生や胎児の初期発生に関わる 『 幹細胞 』 と呼ばれる細胞です。
では、
それ以外の細胞はどのようにして自分の寿命を知るかというと、
同じ種類の細胞を異なる条件下で培養すると、
細胞が分裂する速度は違っても、
分裂できる回数には大きな差が見られません。
このことから、
細胞の寿命は分裂の回数によって規定されていると考えられます。
分裂回数の “ カウンター(回数計) ” として働いているのは 『 テロメア 』 です。
テロメアとは、
染色体を作るDNAの端の部分を言います(下画像)。
※人の染色体。先端に見える白く光る点がテロメア。
この部分には6文字からなる同じ暗号(塩基配列)が延々と繰り返された部分があり、
その長さは細胞が分裂するたびに短くなります。
そして、
あるところまで短くなると、
その細胞はもはや分裂できなくなります。
ではなぜ幹細胞は際限なく分裂するのかと言うと、
これらの細胞では、
テロメアを元通りの長さに伸ばす酵素(テロメラーゼ)が作られているからです。
これらの細胞が分裂しても、
酵素の働きでテロメアはすぐに元通りの長さになるため、
分裂回数を示すテロメアのカウンターはいつでも “ ゼロ ” の状態を保たれるのです。
実はガン細胞もこれと同じ性質を持っています。
多くのガン細胞で、
テロメアを修復する酵素の遺伝子がスイッチオンになっていることが分かっています。
そのため、
ガン細胞の分裂回数を示すカウンターは分裂するごとにリセットされ、
常にゼロに戻るものと考えられます。
つまり細胞に寿命が来ないのです。
※ガンについてや、
ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、
ご質問やご相談のある方は、
コメントにお書きになるか、
または下記のメールアドレスにメール下さい。
真摯なご質問・ご相談には必ず返信致します。
【間 黒助へのご質問・ご相談はこちらまで】
kurosukehazama@yahoo.co.jp
コメントは“承認後に受け付ける”の設定になってますので、
コメントに書いた内容がいきなり公開されることはありません。
公開を控えて欲しい場合はそう書いてもらって結構です。
公開を控えて欲しいというコメントへの返答は、
質問内容を控えてブログの『コメントへの返答』カテゴリーで随時アップします。
少しでも心配事があるなら遠慮せずにコメント下さい。
そんな少しのことで今後が、未来が変わるかもしれません。
僕がご相談やご質問に対してどう返答しても決めるのは自分です。
そのためには少しでも情報を集め、
後悔しない選択をして下さい。
少しでもお役に立てればと思っております。
間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
12:01
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月18日
ガン細胞はアポトーシスを無視する
間 黒助です。
人間をはじめとする生物が1個の受精卵から生まれ育つときや、
成長後に体を正常に維持していくときには、
細胞の増殖をコントロールする仕組みが非常に大切です。
同時に、
不要な細胞を積極的に排除する仕組みもまた重要です。
例えば、
胎児の手の先は、
はじめは “ 団扇(うちわ) ” のような形をしています。
しかしその後、発生がすすむにつれて、
指の間の細胞が死んで消滅し、
ついには手のひらの形となります。
このように、
細胞が “ 計画的に ” 自殺していく現象を、
『 アポトーシス(予定された細胞死) 』 と呼びます。
細胞の自殺は、
個体の発生時に限らず、
大人になってからも体の至るところで起こります。
例えば、
風邪などの感染症が治り、
もはや用済みになった免疫細胞には、
細胞から「自殺せよ」という信号が届き、
また細胞内の遺伝子が傷つくなどの問題が生じたときには、
細胞自身が自殺の引き金を引きます。
ある種のガン抑制遺伝子は細胞に自殺を促します。
例えば、
多くのガンで変異が見つかる 『 p53遺伝子 』 は、
DNAが傷ついたときなどに働き始め、
まずは細胞分裂にブレーキをかけると同時に、
傷の修復機構にスイッチを入れます。
しかし、
傷の程度が酷くて修復不可能な場合には、
アポトーシスによって細胞を死に導きます。
このような遺伝子が変異し、
細胞死が起こりにくくなると、
細胞のガン化が促されると考えられます。
一方で、
ガン遺伝子のあるものは、
細胞が自殺する過程を抑えます。
細胞が自殺しようとしても、
細胞が死なないように、
または死ねないようにし、
細胞をガン化へと向かわされるのです。
Posted by ブラックジャックの孫 at
20:01
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月16日
細胞の分化を抑制する仕組み
間 黒助です。
細胞の増殖を抑える仕組みは、
『 ガンで欠けている遺伝子 “ ガン抑制遺伝子 ” 』 で書いた、
ガン抑制遺伝子だけではありません。
もう1つ重要な制御システムがあります。
それは “ 細胞が分化する ” 、
つまり、
細胞が神経細胞や筋肉細胞などの特別な機能を持つ細胞に変化する現象です。
細胞の増殖と分化とは密接に関係しています。
多くの細胞では、
増殖している間は分化が抑えられていて、
増殖が止まると分化できるようになります。
そして、
分化があるところまで進むと、
細胞はもう増殖できなくなります。
逆に言えば、
細胞の分化が何らかの原因で進まなくなると、
細胞はいつまでも増え続けることがあるのです。
細胞は分化を促す遺伝子と、
分化を抑える遺伝子を持っています。
細胞の分化を促す遺伝子が働かなくなったり、
逆に分化を抑える遺伝子が異常に活発に働きだすと、
細胞の増殖が止まらなくなってガンが発生すると考えられます。
その1つの例は、
アフリカの子供に多くみられる悪性リンパ腫の一種(バーキット・リンパ腫)です。
これは、
十分に分化していないリンパ球が異常に増殖するガンです。
リンパ腫や白血病などでは、
『 転座 』 と呼ばれる染色体の異常がよく見られます。
転座とは、
ある染色体の一部が別の染色体の一部と置き換わることを言います。
白血病やリンパ腫では、
ガンの遺伝子がしばしば転座によって別の遺伝子に繋がります。
その結果、
細胞はガン遺伝子の働きをコントロールできなくなって、
ガンが生じます。
例えばバーキット・リンパ腫の場合は、
『 ミック(myc) 』 と呼ばれる遺伝子が制御不能の状態に陥ります。
最初はトリ白血病ウイルスに取り込まれていたことから見つかったこの遺伝子は、
細胞の分化を抑え、
増殖を促す働きを持っています。
正常な細胞では、
ミック遺伝子の発現は厳密にコントロールされています。
ところが、
リンパ球に分化するはずの細胞の中で染色体転座が起こり、
問題のミック遺伝子が 『 抗体 』 の遺伝子と融合してしまうことがあります。
抗体は病原体や毒物を見分けるための物質で、
リンパ球内で盛んに生産されています。
つまり、
この種の細胞内の抗体遺伝子は、
常に活発に活動しています。
そのため、
抗体遺伝子に繋がったミック遺伝子は、
本来ならスイッチを切るべきときも働き続け、
細胞分化を止めてしまいます。
その結果、
リンパ球になるべき細胞は、
本来なら分裂を止めて分化し、
抗体を生産すべきなのに、
分化せずに増え続けると考えられます。
転座とは、
ある染色体の一部が他の染色体に移ってしまう現象であり、
それに対し逆位とは、
染色体のある部分の向きが逆になっている現象です。
Posted by ブラックジャックの孫 at
10:43
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月13日
ガンで欠けている遺伝子 “ ガン抑制遺伝子 ”
間 黒助です。
ガン遺伝子と比べ、
ガン抑制遺伝子を見つけるのは困難です。
ガン遺伝子は、
それを正常な細胞に組み込むことによって、
ガン遺伝子かどうかを確かめることができます。
要するに、
実験で細胞がガン化されれば、それはガン遺伝子です。
これに対して、
ガン抑制遺伝子は、
正常な細胞中のたくさんの遺伝子のうち、
ガン細胞で失われたり働かなくなっていることを目安として探すしかありません。
そのため、
ガン抑制遺伝子の研究は、
ガン遺伝子の研究に比べて遅れていました。
1986年、
アメリカで最初に見つかったガン抑制遺伝子は、
幼児の眼にできるガン(網膜芽種)の原因となる遺伝子でした。
『 RB 』 と名付けられたこの遺伝子は、
疫学者(患者さんの記録を統計学的に調べる研究者)、病理学者、眼科医、
それに分子生物学者達の見事な連携プレーによって発見されたものです。
このRB遺伝子が作るたんぱく質は、
細胞内で「増殖を止めよ」という信号を受け取ると、
増殖に必要な遺伝子にスイッチが入らないようにします。
そのため、
この遺伝子が失われると、
細胞の増殖が止まらなくなります。
その後、
たくさんのガン抑制電子が発見されましたが、
これらの研究には、
人間の遺伝暗号全てを解読しようという国際的な、
『 ※ヒトゲノム計画 』 の進展も大いに役立ちました。
※ヒトゲノム(解読)計画とは、
1990年に始まったアメリカ国立衛生研究所とエネルギー省を中心とする、
ヒトの全遺伝子情報解読計画です。
一般に22本の常染色体の2本の性染色体XとYの全塩基配列の解読を言います。
2003年に解読が完了し、
ヒトの遺伝子数は約2万2000、
DNAの塩基配列は約30億塩基対であることを明らかにしました。
このプロジェクトの初期の主要パートナーは、
イギリスの医学研究支援団体ウェルカムトラストだったが、
その後、フランス、ドイツ、中国、日本などが加わり、国際協力で進められました。
分子生物学者クレイグ・ヴェンターが率いるセレラ社は、
国際計画とは別に解読を進めましたが、
遥かに低コスト、短期間でヒトゲノムの全解読を終えました。
『 ヒトゲノムマップ 』
上のヒトゲノムマップはこちらからダウンロードして下さい。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0604/17/news038.html#l_yuo_monbu.jpg
Posted by ブラックジャックの孫 at
12:51
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月12日
細胞の増殖を抑える遺伝子
間 黒助
人間の体は、
たえず新陳代謝してるにも関わらず、
体を形作る細胞は、
常に適切な数に保たれています。
これは人間の体が、
細胞の数を調節する精妙なシステムを持つからです。
その1つは、
『 細胞を増殖させる遺伝子 』 に書いたように、
“ 正の仕組み ” です。
そして別の1つは、
細胞の増殖を抑える “ 負の仕組み ” です。
ある種の細胞は、
隣りの細胞やそれを包む物質との間に、
“ 隙間 ” があれば増殖し、
この隙間が無くなれば増殖を停止するようにプログラムされています。
細胞の表面には 『 細胞接着分子 』 と呼ばれる物質が結びついています。
この分子は、
自分が付着している細胞が他の細胞に触れると、
すぐにそれを感じ取って、
その間をつなぐ “ 連結装置 ” として働きます。
それと同時に、
この分子は自分のいる細胞の内部に「増殖するな」という信号を送ります。
その結果、
細胞の増殖が止まるのです。
一方、
細胞はその構造を支え、
代謝を助ける固形物質(細胞外マトリックス)を産生します。
細胞表面には、
この物質を感知するための “ 専用アンテナ ” も備わっています。
アンテナが細胞マトリックスに触れれば、
やはり細胞の増殖ブレーキがかかります。
もし組織間の隙間を感知するこれらの物質の遺伝子に異常が起こったら、
何が起こるのかというと、
細胞の増殖が止まらなくなる可能性があります。
実際、
多くのガンでは、
これらの物質が遺伝子の変異によってうまく働かなくなっています。
そのため、
ガン細胞は組織内の隙間が無くなってもそれに気づかず平気で分裂を繰り返すのです。
もう1つ、
細胞の増殖を抑えるために重要な物質があります。
それは、
細胞に「増殖を止めよ」と指令するホルモンのようなたんぱく質です。
細胞がこのたんぱく質を受け取ると、
細胞内に変化が起こって細胞増殖に必要な遺伝子のスイッチが切られ、
かつ、細胞の増殖を止める遺伝子スイッチが入ります(遺伝子の発現)。
しかし多くのガン細胞は、
この信号を受け取る物質が変化しているため、
信号に気づきません。
そのため、
ひたすら増殖し続けることになります。
細胞の増殖を止める物質を作る正常な遺伝子をガン細胞の中に入れると、
細胞のガンとしての性質が抑えられる場合があります。
そこでこれらの遺伝子は、
『 ガン抑制遺伝子 』 と呼ばれます。
※ガンについてや、
ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、
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間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:56
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月11日
細胞を増殖させる遺伝子
間 黒助です。
昨日の 『 ウイルスもガンを作る 』 で書いたように、
歴史上、
最初に見つかったガンウイルス(腫瘍ウイルス)は、
ニワトリに感染する “ ラウス肉腫ウイルス ” です。
このウイルスが持つ遺伝子は、
ある酵素(チロシンキナーゼ)を作ります。
この酵素の主な役割は、
たんぱく質を構成するアミノ酸の一種(チロシン)に、
リン酸という物質を付けることです。
細胞内でこのリン酸化が起こると、
いくつかの遺伝子のスイッチが入ったり切れたりし、
その結果、
細胞が増殖します。
つまり、
ガンウイルスが細胞にガン遺伝子を持ちこむと、
チロシンキナーゼが異常に活発に働き始めるため、
ガン細胞が作られることになるのです。
サル、ネコ、マウス、ニワトリといった動物を宿主とするガンウイルスからも、
いくつかのガン遺伝子が見つかりました。
それらは、
ある種のホルモンや、
それを受け取る分子(受容体)、
その信号を細胞内に伝える分子などを生産するものでした。
受容体とは、
細胞の外からやってくる特定の物質の刺激だけを受け取る、
いわば専用アンテナです。
この分子は、
ホルモンの信号を受け取ると、
チロシンキナーゼと同じ働きをして、
細胞増殖の引き金を引きます。
正常な細胞では、
細胞が増殖すべきときに、
必要な量のホルモンが供給されます。
そして、
細胞表面の受容体がホルモンを感知したときだけ、
細胞内に変化が起こります。
こうしてはじめて細胞分裂を引き起こすための遺伝子が働き始めます。
ところが、
ガンウイルスが感染した細胞は、
自分自身でホルモンを大量に作ったり、
受容体がホルモンを捉えてもいないのに、
細胞内の変化を進めたりします。
つまり、
このような細胞は、
上流からの指令なしに下流に「増殖せよ」という信号を伝えるのです。
その結果、
細胞は実際の信号などお構いなしに分裂し始めます。
つまり、
細胞同士の間や細胞内で “ 増殖信号が勝手に伝達される ” ことこそ、
ガンウイルスがガンを引き起こす仕組みだと考えられます。
ところで、
ガンウイルスにはRNAを遺伝物質とする※レトロウイルスが多く見られますが、
そのガン遺伝子には共通の特徴があります。
それらの起源がいずれも細胞の遺伝子であるということです。
※レトロウイルスとは、RNAを遺伝子とするウイルス。
細胞に感染すると逆転写酵素を用いてRNA情報からDNAを合成し、
宿主の染色体の間にこのDNAを挿入する。
(ガンウイルスの1つであるHTLV-1はレトロウイルスの一種。
成人T細胞白血病を発症する恐れがあります。)
レトロウイルスが宿主の細胞内に感染すると、
そこで自身の遺伝情報を持つRNAからDNAが作成されます。
このDNAは宿主の染色体に挿入され、
RNA(つまりウイルス自身の遺伝物質)を作るチャンスを待つことになります。
そうすると考えられるのは、
宿主細胞がウイルスRNAを生産したときに、
宿主細胞の遺伝情報を持つRNAと、
ウイルスRNAとが誤って合体したものが生じたという可能性です。
言い換えると、
ガンウイルスの祖先は、
宿主細胞の遺伝情報の一部を盗み取って自分のものとしたということです。
その際(またはその前後に)、
宿主細胞の遺伝暗号の一部が変化をきたし、
活性の高まったたんぱく質、
あるいは大量のたんぱく質を産生する能力を獲得したと推測できます。
このようなガンウイルスは、
感染した細胞にコントロールの効かない異常な分裂能力を与えると考えられます。
こちらを読んでもらえば分かりますが、
『 「がんの特効薬は発見済みだ!!」 の記事を書いて半年が経ちました 』
僕がしている活動でお送りしているパラヒドロキシベンズアルデヒドですが、
上記のチロシンキナーゼと関係があります。
チロシンは芳香族アミノ酸の一種で、
ベンゼン核にアラニンと水酸基とが対角位置に付いた構造をしています。
キナーゼはリン酸気を付加する酵素です。
一方、
パラヒドロキシベンズアルデヒドも、
ベンゼン核にアルデヒド基が付く構造を持っており、
アルデヒド基と対角位置に水酸基があり、
チロシンと似た構造であるため、
酵素の基質受容体がチロシンと誤認してパラヒドロキシベンズアルデヒドを受容するので、
本来の基質であるチロシンが酵素の基質受容体に付着できなくなり、
酵素活性が低下し、
発ガンのプロセスが停止するという仕組みです。
※ガンについてや、
ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、
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間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:33
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月10日
ウイルスもガンを作る
間 黒助です。
地球上の全ての生物は、
遺伝物質としてDNAを使っています。
しかし、
生物とも無生物ともつかないウイルスは違います。
遺伝物質としてRNAを利用する 『 RNAウイルス 』 がいるのです。
ウイルスとは、
生物と無生物の中間のようなものです。
その構造は単純で、
遺伝物質がたんぱく質などでできた殻に包まれているだけです。
そのため、
ウイルスは細胞に寄生することによってはじめて増殖することができます。
【RNA(リボ核酸)】
リボースを糖成分とする核酸。
リボヌクレオチドが多数重合したもので、
一本鎖をなし、
アデニン・グアニン・シトシン・ウラシルの四種の塩基を含む。
一般にDNA(デオキシリボ核酸)を鋳型として合成され、
その遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成を行う。
機能により、伝令RNA・運搬RNA・リボゾームRNAなどに分けられる。
全ての動植物の細胞および一部のウイルスに分布。
最初に見つかったニワトリに肉腫を引き起こすガンウイルスである、
ラウス肉腫ウイルスの遺伝物質もまた、
RNAであることが分かりました。
ところがここで1つ問題が生じます。
それまでに調べられたRNAウイルスは、
どれも増殖するときに自分の遺伝物質を鋳型として直接RNAを複製していました。
しかしこれでは、
DNAを遺伝物質として持つ動物細胞に、
ガン化のような持続的な変化をもたらすのは難しそうです。
アメリカのカリフォルニア大学のハワード・テミン氏は、
※アクチノマイシンDで処理すると、
ラウス肉腫ウイルスが増えなくなることを見つけました。
※アクチノマイシンDとは、
抗がん性抗生物質で、ダクチノマイシンとも呼ばれています。
ガン細胞内に留まりやすい性質があり、
DNAに結合してRNAの合成を抑制し、がん細胞の増殖を阻止します。
小児がん治療では重要な薬となっています。
この薬は、
DNAを鋳型とするRNA合成反応を阻害することが知られています。
そこでハワード・テミンは、
『 ラウス肉腫ウイルスはRNAの遺伝子情報からいったんDNAを作り、
そのDNAからさらにRNAを合成する 』
という仮説を立てました。
そう考えれば、
ウイルスがDNAを遺伝物質として持つ細胞を、
安定にガン化させる仕組みをうまく説明できます。
ウイルスが自分で作り出したDNAを、
宿主の遺伝物質に組み込んでしまうと考えればいいのです。
ところがこのアイディアには大きな難点がありました。
それまでの生物学の常識を裏切っていたからです。
当時、
遺伝情報は、
“ DNA → RNA → たんぱく質 ”
という方向にのみ流れると考えられていました(※セントラルドグマ)。
ハワード・テミンの仮説はこの常識とは逆の、
“ RNA → DNA ” という流れを想定していたのです。
※セントラルドグマとは、
1958年に、
フランシス・クリック(DNAの二重螺旋構造を発見した科学者)によって提唱された、
分子生物学の基本原則のことです。
これによると生物の遺伝情報は、
すべてゲノム “ DNA → 複製 → DNA → 転写 → RNA → 翻訳 → タンパク質 ”
の順に情報が伝達されていると考えられていました。
つまり、
情報の流れが一方的であり、
タンパク質自体がRNAやDNAを合成することができないことを示しています。
しかし、
1970年に上記のラウス肉腫ウイルスにより、
RNAからDNAが合成されるという現象が発見(逆転写酵素の発見)されたため、
セントラルドグマが一部書き換えられました。
またその後、
特に高等生物において、
翻訳の前にスプライシング(splicing)の過程があることも判明しました。
この結果、
セントラルドグマは3段階から4段階へ修正された概念となりました。
セントラルドグマの概念の分子機構を明らかにしようとしたことで、
mRNA、tRNA、遺伝暗号などが発見、解明され、遺伝子発現が定義されました。
しかしその後、
ハワード・テミンの考えが正しいことが証明されました。
アメリカのマサチューセッツ工科大学のデイビッド・ボルティモアが行った実験にヒントを得て、
ハワード・テミンらは、
ラウス肉腫ウイルスがRNAからDNAを複製する酵素を持つかどうかを調べたのです。
答えはイエスでした。
RNA腫瘍ウイルスは常識を裏切り、
RNAからDNAを作ったのです。
そのとき見つかった酵素は後に、
上記にも書きましたが 『 逆転写酵素 』 と呼ばれるようになりました。
こうして “ 常識 ” の誤りが明らかになったわけですが、
皮肉なことに、
その後、
逆転写酵素は、
分子生物学者達にとって不可欠な道具の1つとして活用されるようになりました。
常識を裏切る風変わりなこの酵素を持つ白血病ウイルスや肉腫ウイルスは、
『 レトロウイルス 』 と名付けられ、
トリやマウスの他、
サルやネコからも続々と発見されました。
しかし不思議なことに、
人間からは白血病の一種や、
エイズを起こすレトロウイルスが見つかっただけで、
肉腫ウイルスは見つかっていません。
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:44
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月07日
なぜガンは利己的に振る舞うのか
間 黒助です。
DNAに書き込まれているのは、
具体的にはその生物が作り得る全てのたんぱく質(部品)の構造と、
それら1つ1つを取り出すためのスイッチです。
個々の細胞は常に周囲の状況を察知することにより、
タイミングを見計らって、
たんぱく質合成を指示するたくさんのスイッチを入れたり切ったりします。
その結果として、
細胞自身の性質や挙動が変わり、
生体全体と調和した適切な役割が果たせるようになるのです。
腫瘍細胞、あるいはガン細胞とは、
個体発生や生体維持に必要な、
こうした調節システムに異常が生じたために、
個体全体と自分自身との調和が取れなくなり、
まるで単細胞生物のように、
“ 利己的 ” に振る舞うようになった細胞と見ることができます。
但し、
そのような異常の生じた細胞が全て、
悪性腫瘍(ガン)になるわけではありません。
例えば、
発生の初期段階にのみ影響を与えるような調節システムの異常は、
奇形や流産という形で表れると見られています。
人間の流産の頻度は数パーセントにも達しますが、
これは、
個体発生の失敗によって異常な胎児が生ずる頻度の高さを物語っています。
一方、
腫瘍の中には、
ある大きさまでしか成長しなかったり、
自然に治ってしまうものもあります。
個体発生や生体維持に影響を及ぼすような生体調節システムの異常のうち、
ある特定の条件を満たすもののみが、
ガンの原因になると考えられます。
では、
ガン細胞はどのようにして “ 利己的 ” になるのでしょうか。
ガン細胞の一般的な性質を整理すると、
以下の9つに分類されると言われています。
①外からの指令がなくても分裂し増殖する。
②「増殖を止めよ」という命令があっても無視する。
③死ぬべきときに死なない。
④老化せず分裂し続ける。
⑤自分の周囲に血管を呼び込む。
⑥体内の1ヶ所に留まらず浸潤・転移する。
⑦呼吸ではなく発酵によってエネルギーを得る。
⑧免疫による監視をくぐり抜ける。
⑨遺伝子が突然変異を起こしやすい。
全てのガンがこれらの条件を満たしているわけではありません。
しかし一般に固形ガンでは、
臓器によって差はあるものの、
該当する項目が多いほど悪性度が高くなります。
Posted by ブラックジャックの孫 at
13:05
│人間はなぜガンになるのか
2013年07月06日
細胞の “ 分化 ” と遺伝子の変異
間 黒助です。
僕ら人間の体は、
基本的に細胞とその生産物によって形作られています。
そして全ての細胞は、
ただ1つの受精卵から生じたものです。
メスの卵子がオスの精子を得て受精卵になると、
直ちに猛烈な勢いで分裂を始めます(下画像)。
その結果に生ずる多数の細胞は、
始めは単細胞生物のように、どれも均質で同じ細胞のように見えます。
しかし次第に、
神経、筋肉、皮膚、血球など、
特定の機能を持つ細胞へと変化していきます。
これを、
細胞の 『 分化 』 と言います。
個体が形作られるとき、
細胞分裂と細胞分化は精妙なバランスを保ちながら進行し、
それぞれの時点で、
必要な場所に必要な数だけ、
必要な種類の細胞が分布するように調節されます。
このように、
性質の違う細胞がお互いに協力し合って1個の生物を作り上げていく過程を、
『 個体発生 』 と呼びます。
一方、
成熟した個体においても、
必要に応じて細胞の死と分裂・分化とが筋永を保ちながら起こります。
それによって、
個体の新陳代謝や傷の修復などが行われるのです。
細胞が分裂するときには、
周りの細胞から分泌される分子や接触している細胞の表面そのものが、
細胞の増殖を調節するための信号として働くと考えられています。
このような信号には、
「分裂せよ」
と指令する青信号と、
「分裂を止めよ」
よ指示しする赤信号があります。
そして、
赤信号で分裂を止めた細胞には、
次の3つの運命のどれかが待っています。
①分裂できる状態にとどまる
②分化して分裂能力を失う
③死んで周囲の細胞に食われる
1個の細胞の運命が3つのうちのどれになるかを決定するのは、
その細胞が辿ってきた歴史と、
それを取り巻く環境の両方です。
また細胞によっては、
分裂する場所と体内で実際に働く場所が異なるものも少なくありません。
そのような場合には、
分裂後、細胞を適切な位置に誘導する別の調節システムが働くことになります。
個体が発生したり、
生体を維持するために必要な様々な調節システムのプログラムは、
全て細胞内のDNAに書き込まれていると考えられています。
『 ガンは多細胞生物の宿命的病気 』 にも書きましたが、
僕らの体の全ての細胞は同じ設計図を持ち、
お互いに協調しながら人体という巨大な建造物を作っているのです。
※ガンについてや、
ガン治療に対して少しでも疑問に思ってること、
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│人間はなぜガンになるのか
2013年05月31日
高齢者にガンが多いもう1つの理由
間 黒助です。
ガンと人間の免疫系の関係は相当に複雑で、
まだよく分からないことがたくさんあります。
しかし、
基本的に免疫力がガンを抑え込む力を与えていることは確実で、
免疫が強い人ほどガンにかからず、
免疫力が弱い人ほどガンにかかりやすくなります。
なので、
母親の免疫力でガッチリ守られている赤ちゃんがガンにかかることはありません。
基本的に免疫力が強い人はほとんどガンにかからず、
免疫力が弱ってくる高齢者ほどガンにかかりやすいのです。
ガンが高齢者に多いのは、
ガンの元である遺伝子への変異の蓄積が、
高齢者になればなるほど進むからですが、
もう1つ、
免疫力の強弱という点からも、
ガンが高齢者に多い理由になっていることが分かるでしょう。
下のグラフを見て下さい。
これは年齢別のガン死亡の統計です。
40歳以下のガン死者は極めて少なく、
50歳以下のガン死者もあまりいないということがすぐ読み取れます。
40代、50代前半までのいわゆる働き盛りの年代の人々は、
まだ充分に強い免疫力を持っているので、
あまり病気もせず、
たとえ病気に襲われても(初期のガンも含め)、
それをはねのけることができる(死に至らないですませる)ものだ、
ということがこのグラフからも読み取れます。
ただ、
ここで気を付けてもらいたいのは、
ガンというのは、
ゆっくり進行する病気であり、
大体、1つのガン細胞が生まれてから、
それが宿主の生命を奪うようになるまで平均して20年くらいかかるということです。
それが目に見える大きさになり、
最初の検査に引っ掛かるまで、
およそ10~15年の時間がかかり、
それからガンがさらに生長して宿主の生命を奪うまで、
最低でも5年はかかるということです。
つまり、
上の年齢階級死亡率グラフの年齢を20年ずらして読みかえると、
ガンがスタートするときの年齢分布になり、
また、
5年から10年ずらして読みかえると、
どんどん生長していく時期のガンを抱えている人の年齢分布になるということです。
ガンがスタートしてからしばらくは、
検査しても検査に引っ掛からない沈黙期のガンです。
日本人の3人に1人が、
いずれガンで死ぬということは、
3人に1人の人が、
元気いっぱいの40代、50代にガンをスタートさせ、
自分がすでに生長期のガンを抱えているなどとは夢にも思わない、
50代、60代にガンをどんどん生長させているということです。
元気いっぱい生活しているときには不摂生を積み重ねるものです。
そういう生活の中でガンは生まれ育ち始めるのです。
そういう生活の中で免疫力はどんどん低下し、
年に1回は必ず体を壊して、
何日かにわたって何らかの重大ではない普通の病気(風邪など)で寝込むようになるでしょう。
免疫力の低下で体が悲鳴を上げているということです。
そういうことからも、
ガンと免疫力の低下は強く結びついているのだと思います。
一般的に免疫力を高めることができればガンにかかりにくくなるだろうし、
ガンにかかってからも回復力、治癒力がついて延命率が高まることは確実でしょう。
しかし、
では、個々具体的なガン治療において、
いい免疫療法があるのかというと、それはあまり無いのです。
感染症なら、
主たる大きな感染症についてはワクチンができていて、
予防注射をすることで、
その病気にかかりにくくすることが容易にできるし、
大きな感染症については、
全ての日本人が、
子供のうちに、
半強制的にワクチン接種を受けさせられることになっているのはご存じの通りです。
しかし、
ガンの場合、
ワクチンを作る試みはずいぶん前から世界中で色々なされてきましたし、
今もなされているにも係わらず成功したものは1つもありません。
子宮頸ガンワクチンも、
ガンワクチンではなく、
子宮頸ガンにかかるリスクを非常に高めるヒトパピローマウイルス感染症のワクチンで、
必ずしも子宮頸ガンを防止できるものではありません。
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そのためには少しでも情報を集め、
後悔しない選択をして下さい。
少しでもお役に立てればと思っております。
間 黒助
Posted by ブラックジャックの孫 at
13:00
│人間はなぜガンになるのか
2013年05月30日
転移の謎
間 黒助です。
一昨日書いた 『 マクロファージの裏切り 』 、
昨日書いた 『 ガン化の始まり 』 の続きになりますが、
傷口の修復手順である創傷治癒過程で起こる現象で、
もう1つガン化と非常に大きな係わりを持つのが、
『 上皮間葉転換(EMT) 』 と呼ばれる現象です。
人間の体内の臓器にできるガンは、
ほとんど(約8割以上)が上皮細胞にできる上皮ガンです。
そして上皮というのは、
体内の粘膜を作っている組織で、
人間の体の内側は全部粘膜で覆われていると言ってもいいです。
しかし、
多分ここで疑問を持った方が多いと思いますが、
人間の体内の臓器にできる固形ガンと、
人間の体内組織を覆っている粘膜との間には、
見た目からいってもあまりに大きな隔たりがあるので、
それは信じ難いということだろうと思います。
実際、
体内各部のヌルヌルした粘膜組織と、
見るからにいやらしい姿をした固形ガンとでは、
あまりに違うと言えば違いますからね。
その疑問はその通りで、
ガン化するとき、
上皮(粘膜)細胞が一挙にガン細胞に変わるわけではありません。
その中間段階があります。
それが 『 上皮間葉転換 』 と言われるもので、
上皮細胞が、
まず1度、間葉細胞に姿を変えるのです。
間葉細胞というのは、
体内のあらゆる組織と組織の間にあるつなぎ(結合組織)の細胞で、
そもそも上皮細胞とは形が違うのです。
同じ形できれいに並んでいた上皮細胞が、
圧迫されて菱形の間葉細胞になった途端、
間葉細胞が移動能力を獲得して動いてしまうのです。
要は、
傷口の治癒過程で起きた細胞移動によって、
傷口がふさがれていく過程と同じことが、
ガンでも起きていると考えられているわけです。
上皮間葉転換とそれによる移動能力の獲得というプロセスは、
生命進化史上のごく古い段階で起きた画期的なことであって、
それ以来、
上皮間葉転換に関わる遺伝子は、
あらゆる生物が個体発生のごく初期のところで、
必ず使う遺伝子の1つになったということになります。
具体的に言うと、
受精卵から出発して、
身体各部が出来上がっていく過程のあらゆる場面で、
先に出来上がった身体各部が、
しかるべき場所に移動していくということが何度も何度も起きるわけですが、
その全ての移動において利用される遺伝子が、
これと同じ遺伝子なのです。
ハエやミミズの体内でも人体でも、
ガンの転移の原因となる遺伝子は同じです。
受精卵の胚の中にある、ある部分から別の部分へと、
正常な細胞が移動できるようにするものです。
それと同じ遺伝子を利用してガン細胞は転移する力を得ています。
つまり、
生命の自然なシステムで、
ヒトとハエの最後の共通の祖先は、
6億年から6億5000万年前に存在していて、
その後、別々に進化しました。
しかし、
ヒトはいまだに胎児が発達する段階でハエと同じ遺伝子を使っているのです。
それがガンの原因となるわけですが、
それらの遺伝子は6億年間ほとんど変化していません。
同じ遺伝子で、同じ役割を持っています。
6億年ほど前、
多細胞生物が地球に発生した時点でガンのリスクが生まれました。
多細胞であれば、
その中の1つが異常な行動をし始める可能性があるということなのです。
多細胞生物の存在そのものがガンのリスクだと言えます。
ガンは産業社会が生んだものではありません。
ガンは6億年前から存在しているのです。
僕達はライフスタイルを変えることで、
ガンになる割合を増やしたり減らしたりすることはできます。
しかしガンは現代の産物ではありません。
ガンは、
全ての多細胞生物にとって、
本質的で先天的な宿命の病なのです。
ガンは全ての多細胞生物の宿命だと考えれば、
自分がガンになるのも仕方ないことではないかと納得してしまいます。
なぜガンがそれほど恐るべき力を持っているのか。
とにかくガンというのは、
色々な手段で叩こうとしても、
ガンのサバイバル能力というのは圧倒的で、
死んだと思っても死なない、その繰り返し繰り返し再発して、
さらにはどこか違うところに飛んでいく転移という現象を起こします。
ありとあらゆる手段を自ら作り出して困難を突破していくガンの能力というのが、
ありとあらゆる困難な状況の中で生命というものが生き抜いてきて、
今日の生命に溢れる時代みたいな、
そういう時代を生き抜いた、
生命の歴史そのものがガンの強さに反映しているということなのでしょう。
ガンは自分の外にいる敵ではなくて、
自分の中にいる敵というか、
「あなたのガンは、あなたそのものである」 という、
そういうことなのです。
だからそういう2重の意味でガンという病気は本当に一筋縄ではいきません。
ガンという病気そのものの中に、
生命の歴史何億年の、歴史そのものが込められた力が継続して生きています。
そういうことが1つありますし、
それからガンの強さは、
実はある意味では自分自身の強さというか、
自分自身の中にある生命というシステムでもあるわけです。
だからガンをあまりにもやっつけることに熱中し過ぎると、
実は自分自身をやっつけることにもなりかねないという、
ガン治療の物凄く大きなパラドックスというのがそこにあると思います。
このようにして獲得された転移能力こそ、
ガンの強さの根源みたいなところがあります。
つまりガンは、
60兆個の細胞が生存を続けていく生命の通常の営みの中で不可避的に発生します。
そのように不可避的に生まれた最初のガン細胞巣は原発巣と呼ばれます。
ガンの患者さんの多くは、
原発巣のガンが発展して死に至るのではなく、
それがどこかに転移して、
転移した先のガンが原発巣よりずっと悪性化したしぶといガンになって、
転移先のガンで死に至る方が多いと言われます。
しかし、
実はそこのところが必ずしもよく分かっていないのです。
転移のメカニズムがまだ充分に分かっていないことにも原因があるのですが、
あるガンが、
本当のところどこかに原発巣がある転移ガンなのか、
それとも、
そこで独自に発達してある時点から外在化したのかは、
よく分からないので、
個々のガンについて諸説が入り乱れることがあります。
転移の経路は、
基本的に原発巣のガンが血管の中に入って、
血流によって遠いところに運ばれるのだと考えられています。
しかし、
そこのところも実はまだよく分かっていないところなのです。
ガン細胞は基本的にどこかに足場を確保して、
そこで育っている限りは生きていられますが、
足場から離れてしまうと、
途端に生命維持が難しくなると考えられているからです。
そして、
心臓周りの血流の速さがガン細胞にとってあまりにキツ過ぎる(秒速100m以上)ので、
ガン細胞が全身循環系の主要な動脈に入って何度も叩かれると、
たいてい参ってしまうと言われています。
ガンが色々な臓器に転移するのは、
その中で血流が緩んで、
ガン細胞がそこに漂着して、
新たなコロニーを作りやすいところが見付かるからだと言われています。
いずれにしてもガン細胞が、
血管に入ることで転移するのがメインルートなら(リンパ管を通って転移するルートもある)、
血流をモニターして、
そこを流れているガン細胞の数をカウントすることで、
転移の危険性を判定できるはずです。
そういうアイデアは誰でも容易に思い付くので、
これまで多くの試みがなされてきましたが、
実はあまり成功していません。
引っ掛かるガン細胞の数があまりにも少なかったのです。
それでガン細胞は血流の中ではほとんど生きられないのだ、
と考えられるようになったという経緯があるわけです。
しかし最近になって、
全く新しい発想で開発された 『 CTCチップ 』 なるものを用いることで、
これまで数百倍の感度で血中を流れるガン細胞を捉えることが出来るようになりました。
これは、
半導体のチップを作るのと同じ技術を用いて1つ1つのチップの中に、
約8万本の極微のプラスチックの円柱を立て、
その1本1本に特定のガン細胞を捕まえるための抗体を、
ビッシリ貼り付けてしまうというものです。
このチップの中に特定の患者さんの血流の導入して、
その人の血流の中のガン細胞をリアルタイムで拾い上げることで、
病状の診断もできるし、
治療成果を測ることも出来るというわけです。
半導体チップと同じ生産過程で出来るので、
大量生産が可能だし、
1個1個のチップを安くして、
近い将来、誰でもいつでも利用できるようになるかもしれません。
感度が数百倍上がったので、
これまでガン細胞など血流中にないと思われていた患者さんの血中からも、
ガン細胞がどんどん見つかるようになって、
ガンの病態の捉え方が大きく変わりつつあります。
そういうデータがもっとたくさん出てくるようになると、
これまでよく分からなかった転移のプロセスが、
さらによく分かるようになると思います。
最後にCTCチップによる検査のデモンストレーションを見て頂きたいと思います。
CTCチップの本デモンストレーションの中で、
血液(蛍光標識されていない)に混合した、
循環腫瘍細胞(蛍光標識されて白く見える)は、
チップ内に流れる際にナノスケールのポストに捕捉されます。
チップは顕微鏡用スライドのサイズで78,000本のポストがあり、
ポストには腫瘍細胞の上皮細胞接着分子に対する抗体がコーティングされています。
(ビデオ提供者はマサチューセッツ総合病院/ハーバードメディカルスクールの、
Dr.Sunitha Nagrath 氏)
Posted by ブラックジャックの孫 at
14:36
│人間はなぜガンになるのか
2013年05月29日
ガン化の始まり
間 黒助です。
昨日書いた 『 マクロファージの裏切り 』 の続きになりますが、
切り傷が治っていくとき、
傷口のところで肉が盛り上がりますが、
あの肉の盛り上がりは、
実質的に腫瘍形成と同じです。
そして、
その過程で主役を演じてるのがマクロファージなんです。
普通の人が知っているマクロファージは、
異物をひたすら食べていく大食漢細胞としてのマクロファージですが、
マクロファージにはもう1つの大きな役割があります。
それは切り傷ができて、
それを大急ぎで修復しなければならないというときに、
その現場監督として次々に命令を発して現場を仕切っていく役割です。
そういう傷口の修復手順は、
DNAの中に 『 創傷治癒プログラム 』 として埋め込まれています。
そのプログラムに従って、
一連のサイトカイン(信号物質)を次々に出していくのがマクロファージなんです。
傷口の修復過程におけるマクロファージの最も大切な役割は、
異物を食べることではなく、
信号物質を次々に発することで、
大きな創傷治癒プログラムを円滑に走らせることにあるのです。
マクロファージの一連の裏切りと取れる行動が、
実はマクロファージが本来の機能を果たしているに過ぎないのです。
通常、傷口ができると、
体から盛んに救援を求める信号物質が放出されます。
この物質を感知するとマクロファージなどの免疫細胞が集まります。
マクロファージは細胞の移動や成長を促す物質を放出します。
こうした物質に刺激を受けて皮膚の細胞が移動を開始し傷口を修復します。
要するに、
マクロファージが発出する一連のサイトカインによって始まる創傷治癒プログラムが、
ガン化の引き金を引いているということなのです。
そしてそれは同時に、
転移能力獲得の第1歩になっているということなのです。
マクロファージが通り道の異物を食べることで通路を切り開いてくれるから、
ガン細胞は移動能力(転移能力)を獲得するのだという意味ですが、
それはレベルの低い説明で、
マクロファージが信号物質(サイトカイン)を次々に出してくれるから、
その信号物質の発するサインに従って、
一連のプログラムが進行し、
それがガン化と転移をもたらしているというのが、
正しい説明です。
ここで大事なことは、
ガン化の第1歩は、
体内で起きた何か異常な現象から始まっているのではなく、
全く正常な過程の一部として踏み出されているということです。
人間の体の表の皮膚も、
内側の皮膚も、
しょっちゅう何かで傷がつきます。
傷がつくのも日常茶飯事の現象なら、
その修復過程が始まるのもごく当たり前のことです。
そして、
無事に修復過程が終われば、
傷口の跡は跡形もなく消えてしまいます。
しかし大きな傷口の跡が肉が盛り上がったままいつまでも消えないで残ることがあります。
腫瘍形成の最初の1歩はそれと同じ現象と言えるのではないでしょうか。
胃腸の粘膜が繰り返し傷付けられ、
その修復が何度も何度も繰り返されるうちに、
治癒しきれない創傷跡が残るようになりガンが発生するというわけです。
そういう傷を胃腸の内側になるべくつけない方がいいから、
刺激が強い食物、
発ガン性物質を含む食物をあまり摂取するなと言われるわけです。
しかし、
そういう食物にしても、
度が過ぎなければ食べても一向に構いません。
ガン化のリスクは統計的に高まりますが、
すぐにガンができるということではありません。
Posted by ブラックジャックの孫 at
11:28
│人間はなぜガンになるのか